1963年日活
92分

 「エースのジョー」こと宍戸錠を主役とする裏社会サスペンアクション。
 この時代に日活で量産されたプログラムピクチャーの一つで、「すねに傷ある早撃ちのヒーローが、ヤクザ同士の抗争に巻き込まれ、美女との絡みや男の友情を経て、派手なドンパチが起こって、最後は一人生き残って去っていく」という型通りのプロットを踏襲してはいる。
 が、大藪晴彦『人狩り』を原作とするせいなのか知らん、そこにいささか“不健全な”匂いが加わっている。
 SM趣味あるヤクザの親分とか、女の顔をナイフで切り刻んで“すだれ”にするオカマ風お坊ちゃまとか、売春の元締めをする刑事の妻とか、変態的というか退廃的というか、石原裕次郎や赤木圭一郎が主役をはる作品なら「スターのイメージを落とす」という理由から許されないだろうようなデカダンスが満ちている。
 宍戸錠ならばOKっていうあたりが、ジョーというキャラがもつ不思議な魅力。
 
 鈴木清順はこのデカダンスを見事に映像化している。
 いや、清純が撮ればすべてデカダンスになる。
 『東京流れ者』『けんかえれじい』『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』など、清純美学の肝はデカダンスの美にあるんじゃなかろうか?
 ひとつひとつのショットの衝撃力を生んでいるのは、目を見張る色彩のあでやかさ、意表を突く構図、小道具に至る細部へのこだわり、日本人離れしたアールデコ調のスタイルにある。
 ショットの力が常にドラマを凌駕してしまうところが耽美主義のごとく思え、デカダンス(退廃的)と映るのだろう。

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 鈴木清順監督についてはよく知らず。
 当然、美術学校出身だろうと思っていたのだが、ウィキペディアによるとそうではなく、旧制弘前高等学校(現弘前大学)の柔道部にいたという。
 学徒出陣で兵に取られ、復員後は東京大学経済学部を受験したとある。
 いったい、どこであの類いまれなる美的センスを身につけたのだろう?



おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損