両神山
簑山から見た両神山

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秩父市街から見た両神山

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小鹿野町から見た両神山

 両神山は秩父の奥座敷にあるので、自家用車がなければ日帰り登山は厳しい。
 公共交通機関利用組は、秩父市内か小鹿野町内のホテルに前泊して早朝のバスで麓に向かうか、あるいは麓にある民宿両神山荘に前泊するのがベター。
 足にも体力にも地形図読解にも自信のないソルティは、できるだけ朝早く歩行スタートしたかったので両神山荘に予約を入れた。

 前日(11/3)、西武秩父駅17:05発の小鹿野町営バスに乗って薬師の湯で下車、17:55発の日向大谷(ひなたおおや)行き最終バスに乗り換えた。
 乗客は1人。
 あたりはすでに真っ暗で、道の両側にどんな景色が流れているのか皆目わからない。
 トンネルのような細くて暗い道をひたすら奥へ奥へと突き進んでいく。
 20個以上あるバス停をどんどん通過していく。
 どこに連れていかれるのだろう?
 バックミラーに映った運転手の顔がキツネだったら相当コワい。
 そうでなくとも両神山にはどこか人を畏怖させる、簡単には寄せ付けないものを感じるのだ。
 なんといっても神の山。古くから修験道の聖地だった。 
 自分はまだ呼ばれていないのではないか?

 ――なんてことを思ったのは、昼前にリュックを背負って意気揚々と自宅を出たものの、途中駅で財布を忘れたのに気づいて引き返したドジな一幕があったからである。
 2時間のロス。
 本当は西武秩父駅14:35発のバスに乗って明るいうちに麓に到着する予定でいたのに。
 なにかが「行くな」と引き留めているような気がする。
 こういうサインは無視しないほうがよいのでは・・・・。
 滑落? 道迷い? クマと遭遇? 神隠し?
 不吉なことばかり頭に浮かぶ。

 だが、最終バスにぎりぎり間に合うようなタイミングで財布忘れに気づいたのは、やっぱり許されている証拠ではないか?
 連休にもかかわらず、宿の予約もすんなり取れたではないか?

 いまさら自問自答しても遅い。
 バスは右に左に揺れながら、より深い暗闇に飲み込まれていく。 
 
 18:30、日向大谷に到着。
 木々に囲まれた駐車場は人っ子一人いない。
 街灯もない暗闇に一人取り残され、心細さが募る。
 懐中電灯を取り出して足元を照らす。
 と、目の前の崖の上に灯りの点った山荘らしきが見えた。
 そのはるか上は・・・・
 見たことないほどの満点の星空。
 うん、呼ばれているに違いない。

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● 歩行日 2023年11月4日(土)
● 天気  晴れ
● 行程
06:30 両神山荘
    歩行開始
07:00 七滝沢コース分岐
07:50 八海山(10分休)
08:30 弘法ノ井戸
08:40 清滝小屋(10分休)
09:45 両神神社、御嶽神社(10分休)
10:30 山頂(1,723m)
    昼食(30分)
11:00 下山開始
12:00 清滝小屋(30分休)
12:40 弘法ノ井戸(10分休)
13:10 八海山(15分休)
14:15 七滝沢コース分岐(15分休)
15:00 両神山荘
    歩行終了
● 最大標高  1,723m
● 最大標高差 1,090m
● 所要時間  8時間30分(歩行6時間20分+休憩2時間10分)
● 歩行距離   約10.3km

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「ポツンと一軒家」を地で行く両神山荘。
90歳前後の夫婦が明るく迎えてくれる。
話好きな親爺さんによると、昭和51年から民宿を始めたとのこと。
「秩父で一番早く水洗トイレにしたのはウチだよ」

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このあたりは戦国時代に武田信玄に追われた鉢形城(北条氏)の落武者の里と伝えられる。
民宿の傍らには両神神社の里宮がある。
「ここには400年前から住んでいる。自分は10代目の婿養子だよ」と親爺さん。

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一泊2食8000円だった。
とにかく夕食が盛沢山! 
10皿を軽く超える「ザ・おふくろの味オンパレード」に感動。

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朝食は5時半から
宿の向かいに両神山の尾根が朝日に輝く。
一番高いところが目指すべき剣ヶ峰。
準備運動して6時半に歩行スタート!

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親爺さんによると、年間50人の遭難があるという。
週に一人は遭難している計算になる。
なんて危険な山なんだ!
滑落による負傷や死亡事故、道迷いによる救助隊出動なども珍しくない。
「秩父市と小鹿野町の消防隊が連携して山岳救助隊を作っているよ」
たしかに、ところどころ道が細く、路肩がやわらかく、崩れやすい。

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三連休の中日、登山客は結構多かった。
人の姿が前後に見えるのはやはり安心である。

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山道に立つ不動明王
登る前は畏怖を感じていたが、山中に入ってみると包み込まれるような安堵感があった。
同じ修験道の聖地だからだろうか、高尾山と似たような“気”を感じた。

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いくども沢(薄川)を渡りながら高度を上げていく

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弘法ノ井戸
この湧水はほんとうにありがたい、そして旨い!

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やっぱりあなたが呼んだのですね。
そうじゃないかと思ってました。

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清滝小屋(1,282m)
かつては宿泊施設だったが、現在は無人の避難小屋となっている。
周囲にはテーブルも多く設置されて、最後の急登前の小休止にうってつけ。

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ここなら十分泊まれる。

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産泰尾根
ここから岩場やクサリ場が続き、気が抜けない。

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両神神社
ご祭神はイザナミ・イザナギ
もともとは龍神を祀る山だったらしい。
「竜神山」転じて「両神山」になったとか。

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御嶽神社もあった。
三峰神社同様、御使いはオオカミである。

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長押に立派な龍の彫刻があった。
あなたがこの山の主でしたか・・・。

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御嶽神社の内陣
右横の貴族の像が気になる。

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いったい誰だろう?
菅家? 聖徳太子?
分かる人いたら教えてください。

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歩行3時間越え、足がガクガクで思うように上がらない。

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迷いやすい箇所には進入禁止ロープが張られ、枝に正道を示す赤いリボンが巻き付けてある。
下山時に2度山道をはずれたが、リボンに助けられた。

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ついに山頂到達!
正味4時間。
ごつごつした岩場で腰を下ろせるような場所はない。

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左足の踵の骨折から丸4年。
ついにここまで復活した。
感無量。

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南側(丹沢方面)

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蜃気楼のような富士山

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西側(南アルプス方面)

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山頂は狭く、人で混雑していた。
ちょっと下りた岩陰で弁当を広げる。

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東側(秩父市街方面)
まんなかあたりの突起が懐かしの武甲山

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おお! 秩父市街が見えるじゃないか!

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河岸段丘に囲まれた市街地は砦のよう
あそこから幾度も仰ぎ見た山にいま来ている!

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11:00下山開始
来た道を戻る。

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清滝小屋で30分の休憩
汗だくの下着を着替え、爆弾を抱えた右膝にサポーターを巻く。

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登り時は紅葉を愛でる余裕もなかったな・・・

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今年の紅葉は半月ほど遅いらしい
ラッキーだった

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登りより下りのほうが断然怖かった。
砂利の坂道で靴が滑って、3回尻もちついた。
他の人も結構滑っていた。
最後まで気を抜かず、焦らず、足元を確かめながら。

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右膝をなだめるため、下りは休憩を多めにとった。
やはり朝早く立ったのが正解。

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朝は気づかなかったが、登山口でこの方が見守っておられた。
そう、単独行ではない。いつだって同行二人

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ただいま~。
15:00ちょうどに下山。
山頂から正味4時間。

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15:15発の小鹿野町営バスに十分間に合った。
ちなみにこのバスの運賃は驚きの安さ!
90分乗って500円である。

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薬師の湯で途中下車
ぼろきれのように草臥れきった体を休める。
湯あがりの缶ビール。「このために生きてるよな~」

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その夜は秩父市街に泊まった。
翌日曜日は完全にグロッキーかつ筋肉痛で動けなかった。
月曜早朝、秩父神社を詣で、無事下山を感謝。

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菊花展をやっていた

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正直、ここまで足が治るとは思っていなかった。
人間の自然治癒力と医学の進歩はグレイトだ。

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熊には遭遇しなかった。
宿の親爺さん情報では、秩父ミューズパーク周辺に出没しているとか。
家族連れが憩う公園だ。
秩父市は市内の小中学校に通うすべての児童・生徒に、クマよけの鈴と笛を配布している。