1965年大映
102分、白黒
日中戦争のさなか、満州の陸軍部隊に送られたタイプの全く異なる2人の兵隊の友情と、軍隊生活でのさまざまな理不尽な体験が描かれる。
若尾文子が従軍看護師を演じた『赤い天使』同様、増村監督らしいエグイまでのリアリズムが貫かれている。
往復ビンタする、殴る、蹴る、腕を捻りあげる、足で踏みつける、竹刀で叩く、腹をパンチする、熱湯をかける、短刀で切りつけ合う・・・・。
徹頭徹尾、軍隊生活における暴力が描き出される。
イジメや身体的虐待なんていう生易しいものではない。
本作は、現在なら間違いなく「R15+」指定(15歳未満鑑賞禁止)がつくだろう。
きびしい上下関係を基盤とする威嚇と暴力と恐怖によって集団の規律を整え、個人の精神を鍛えるという、今なお高校の運動部や大学の体育会系サークル、あるいはワンマン経営のブラック企業で連綿と受け継がれている大日本帝国的精神論。
どこの国でも軍隊は同じようなものなのか?
ソルティは海外の軍隊についてはその国の戦争映画でしか知らないので明言できないが、やはり大日本帝国の軍隊はとくに暴力的だったのではないかという気がする。
上官からの理不尽な暴力に日々耐えることで兵士それぞれの内部に鬱積した怒りが、いったん敵に向かったときに暴発した。
それゆえ、戦時中の日本兵はあれだけ残酷なことができたのではあるまいか。
無闇な戦線拡大と重なる敗北によって兵隊不足に陥ったにもかかわらず、今いる兵士を粗略に扱う。
これで勝てるわけがない。
ともあれ、主人公の“兵隊やくざ”大宮貴三郎はよく殴られるし、よく殴る。
破天荒で豪放磊落、肝っ玉が太い。
人情味があって恩義に厚い。
演じている勝新その人のよう。
その上官で教育係をまかされた有田上等兵は、暴力と曲がったことの嫌いなインテリ眼鏡。
演じるは田村三兄弟の長男、田村高廣。
気障な二枚目でならした弟の田村正和にくらべると、地味で真面目な印象がある。
役の上でも、役者としての資質の上でも、また役を離れた私生活の上でも、まったくタイプの異なる、一見相性の良くなさそうな二人だが、演技がうまいのか、演出が巧みなのか、勝新と田村は互いに惹かれ合うところがあったのか、ルパン3世と次元大介のような良いコンビとなっている。
案の定、『兵隊やくざ』はこのあとシリーズ化し、9作まで作られた。
将校御用達の女郎屋の一番人気を誇る音丸を演じている淡路恵子。
これまであまり注目してこなかったが、味のある上手い女優である。
“へそ酒”(「R18+」指定)なんて芸当をやってのける思い切りの良さに感心した。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損