2013年日本
102分

 田中慎弥の芥川賞受賞作『共喰い』が原作。
 昭和末期の下関市を舞台とする家族の破綻が描かれる。
 性と暴力とさびれた田舎町とそこで鬱屈する青年という景色に、永島敏行が主演したATG映画『サード』『遠雷』を想起した。
 つまり、昭和的感性の色濃い作品である。(ご丁寧にラストには昭和天皇崩御まで出てくる) 
 
 鬱屈する青年を演じるのが当時20歳の菅田将暉。
 デビュー時の永島敏行同様、芝居は上手くないがインパクトはある。
 なるほど素材の良さを感じさせる。

 父親役が光石研。『博多っ子純情』の主役郷六平である。
 いい役者になったなあ~。
 あの純情で真っ直ぐな少年が、セックスの最中に女を殴ることで快感を得る変態オヤジになるとは・・・・。

 母親役の田中裕子の巧さは嫌味と感じるほど。
 この人と大竹しのぶは、戦後生まれの名女優ツートップと言っていいだろう。
 どちらもNHK朝ドラでブレイクした。
 過去にTVドラマ(TBS系列『恋人たち』)では共演しているが、映画では共演していないのでは?
 女優対決が見たいものである。
 ついでにさんまとジュリーも一緒に出たら面白い。

 光石研演じるオヤジの性暴力を一身に受ける女を篠原友希子が演じている。
 はじめて聞く名だが、なかなか印象深い芝居。
 水谷豊『相棒』シリーズにレギュラー出演しているらしい。

 青山真治の演出は手堅い。
 風景や風物のインサートショットが上手い。
 人物のいない、いわゆる空ショットによって、観る者の無意識にメッセージを送り、知らぬ間に感情を揺り動かしドラマを紡いでいく手法は、やっぱり小津安二郎の影響を感じる。
 荒れた河原に捨てられた自転車のカゴの絵が、登場人物の心象風景と重なっていく。
 これぞモンタージュ、すなわち映画的だ。

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像



おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損