1935年原著刊行
2015年早川書房(訳・加賀山卓朗)
これぞ本格推理小説の王道、これぞミステリー黄金時代の精髄。
寝不足覚悟で深夜まで早川ミステリー文庫や創元推理文庫に没頭した高校時代に戻ったような気にさせられた。
不可能犯罪(密室)、容疑者の群れ、名探偵と相棒の軽妙なやりとり、隠された過去、恋や冒険のロマンス、神秘的ムード、推理小説談義、張り巡らされた伏線、鮮やかな推理・・・。
ソルティが推理小説に求めるすべてが揃っている。
これぞ現役最高の推理作家アンソニー・ホロヴィッツにつながる英米ミステリーの伝統である。
『火刑法廷』はラスト5ページのオカルト結着にいたく落胆したが、本作は日常の物理法則に則った合理的解決が示されており、ソルティの中で「ディクスン君、名誉回復」といった思いがした。(●●を使ったトリックは両作ともに共通している)
本作は英国を遠く離れたトランシルヴァニアに事件の発端がある(それがタイトルの由来)。
トランシルヴァニアと言えば吸血鬼ドラキュラの本拠地、オカルチックな雰囲気に不足はない。
過去のおぞましい犯罪が時空を超えて現在英国につながるという趣向は、シャーロック・ホームズのデビュー作『緋色の研究』(byコナン・ドイル)を想起させた。
英米ミステリーの面白さの一つは、国際色豊かなところにある。
英国の場合は、広大な植民地を有し“日の沈まない国”と言われた大英帝国時代の名残があるし、もともと移民国家である米国は人種のるつぼである。
残念ながら、日本のミステリーに求めようないのがこの国際色。
三谷幸喜が脚色した和製『オリエント急行殺人事件』はよく出来ていたが、この壁だけはどうにも乗り越えようがなかった。
読後しばらくして冷静に考えてみると、「いったい真犯人は何を無駄なことやっているんだろう?」という気がしないでもない。
上手くいくかどうか分からない大がかりなトリックをぶっつけ本番でやるよりも、単純に人のいない街角で相手を刺殺し、アリバイ証明を共犯者に頼むほうがよっぽど確実安全だったろうに・・・。
それは言いっこなしか。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損

