1950年大映配給
111分、白黒

 1948年に実際にあった事件をもとにした社会派映画。
 有力な町会議員と警察とヤクザ組織が結託して街を牛耳り、ヤミ取引等の不正を行い、住民がおびえて暮らす某県東篠町。
 一人の新聞記者の書いた告発記事がきっかけとなって、暴力団追放・行政刷新の住民運動が徐々に広がり、町民大会が開催され、闇が暴かれ、町が浄化されていく過程を描く。
 なにを隠そう、某県とはわが故郷埼玉県であり、東篠町とはいまの本庄市のことである。
 この事件は本庄事件としてウィキペディアにも載っている。
 ちなみに、不正と闘った新聞記者とは朝日新聞の岸薫夫記者である。

 本庄市は埼玉県の北端に位置し、利根川をはさんだ向こうは群馬県伊勢崎市である。
 古くは中山道の宿場町として栄え、織物で有名な町だったようだが、ソルティはとんと知らなかった。
 だいたいソルティのような東京寄りの県南に住んでいる者は、親戚でもいない限りわざわざ県北に行く機会も動機もない。(小学校の社会科見学で行田に古墳見学に行ったくらい)
 同じ埼玉というよりも、群馬や茨城や栃木と込みの「北関東」という別文化に属しているような感覚がある。
 つまり、暴走族、頭文字D、トラック野郎、工藤静香、深夜のコンビニやパチンコ店にたむろするジャージの若者・・・・いわゆるヤンキー文化。
 なので、今回はじめて本庄事件を知っても別段驚くことはなく、「昔から“やんちゃ”な風土だったんだな~」という印象を強めることとなった。
 いや、現在の本庄市は平和な住みよい街だと思います、きっと。

 出演陣がバラエティに富んでいる。
 主役の岸記者(北記者と名を変えている)に原保美、歌人・原阿佐緒の息子である。
 支局長に“たらこ唇”志村喬。
 町民の敵となる町一番の権力者に三島雅夫。
 そのほか池部良、宇野重吉、三條美紀、中條静夫、根上淳、船越英二、大坂志郎、殿山泰司、滝沢修、高堂国典と、実力ある個性的バイプレイヤーたちが揃っている。
 三島雅夫はどこかで見た顔と思ったら、小津安二郎『晩春』で、再婚して若い嫁をもらったばかりに紀子役の原節子に、「おじさま、不潔よ!」と敵視されてしまうチョビ髭の親爺である。本作では、ほんものの敵役、ふてぶてしい憎まれ役に徹している。

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左より、船越英二、原保美、池部良、志村喬

 人権と民主主義を謳う日本国憲法が公布されたとはいえ、旧態依然とした封建的風土の根強く残る時代、ましてや戦後の混乱期である。
 こうした腐敗は、本庄のみならず、日本のあちこちの街で起きていたのだろう。
 保守系町会議員とヤミ取引を行う織物業者と警察署長と検事と報道機関が、座敷に芸者を呼んでの飲めや歌えやの乱痴気騒ぎ。
 こういう光景は、まさに昭和ならでは。
 ネット社会の現在では一発アウトだろう。

 映画では触れられていないが、本庄事件における朝日新聞の告発キャンペーンをGHQ(埼玉県軍政部)がバックアップしていたらしい。
 朝日以外の報道機関は、街の有力者の背後に保守系の国会議員が潜んでいたので、口をつぐんでいた。
 もちろん、1948年の日本はまだGHQ占領下にあった。
 GHQという“錦の御旗?”がついていたからこそ、朝日新聞はくじけずにキャンペーンを完遂でき、この町民運動は成功したんだろうか?
 としたら、ずいぶん皮肉な話である。





おすすめ度 :★★★★

★★★★★
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★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損