今年は77本の映画を観た。
 5日に1本だ。
 NHK制作『雪国』、『宮沢賢治 銀河への旅』など、TVでも良いドラマやドキュメンタリーもあったが、ここでは劇場上映されたものに限定した。
 以下、鑑賞した順に、(監督名、公開年)と共に挙げる。
  • ニューオーダー』(ミシェル・フランコ、2020)・・・・身も凍るような政治ホラー。格差社会に対する民衆のテロリズムが、軍隊によるファシズム独裁に取って代わっていく様を描く。「フィクションだろう?」と甘んじていられない。
  • RRR』(ラージャマウリ、2022)・・・・3時間ノンストップのボリウッド娯楽大作。アクション、友情、恋愛、家族愛、祖国愛、神話、動物、ナトゥダンス、なんでもござれのザ・インド。
  • 標的の島 風かたか』(三上智恵、2017)・・・・沖縄の島々でいま起きている猛烈な軍事要塞化のさまを描くドキュメンタリー。「今度戦争が起きたら、沖縄は島ごと無くなるでしょう」という地元の人の言葉がこたえた。
  • 青い山脈』(今井正、1949)・・・・わぁ~かく明るい歌声に♪  戦後日本の再生を予感させる爽やかな青春物語。英語教師を演じる原節子の神秘的な美しさに酔いしれた。
  • わが青春に悔いなし』(黒澤明、1946)・・・・後半の農村場面が素晴らしい。泥まみれの原節子、杉村春子、高堂国典の3人の息の合った芝居とボルテージ高い演出は、黒澤映画の中でも特筆すべき。
  • 福田村事件』(森達也、2023)・・・・今年は関東大震災100周年だった。各地で勃発した朝鮮人虐殺のなか、朝鮮人と間違えられた被差別部落の行商たちも虐殺された。千葉県の事件現場を訪れたのは桜満開の折だった。
  • 日本のいちばん長い日』(岡本喜八、1967)・・・・これはいい意味で期待を裏切る面白さだった。若き黒沢年男の熱演、「死神博士」天本英世の怪演が目に焼き付いている。むろん、タイトルは1945年8月15日のことだ。
  • 声もなく』(ホン・ウィジョン、2020)・・・・現代韓国映画の質の高さとパワーを証明する傑作。唖の青年を演じるユ・アインの切なすぎる演技に胸を打たれ、まさに声も出ない。
  • 浮草』(小津安二郎、1959)・・・・『東京物語』と並ぶ小津の傑作。京マチ子と中村鴈治郎ががっぷり四つに組んだ芝居が見物。松竹と大映のカラー(作風)の違いが面白い。今年は小津安二郎生誕120年、没後60年の節目で、展覧会他様々なイベントがあった。
  • 異端の鳥』(ヴァーツラフ・マルホウル、2019)・・・・「映画とは何か?」と問う者あれば、その答えはここにある。ベルイマンばりの映像の力に圧倒される3時間弱。少年の地獄めぐりの理由を知った時、観る者の心はガザ地区に飛ぶ。
次点グループ
 こうしてみると、やはり昔の日本の巨匠は強い。
 昭和時代の映画は、令和のSDGs的観点からすればいろいろと問題あるシーンが多いのだが、その時代に生きた人間の“真実”というのがある。
 それを現代の感覚から一方的に否定するのは、現代人の驕りであろう。
 その時代に支配的な社会の価値観と、自由を求める個人の間に生じる相克。
 想い馳せるべきは、その狭間で生きる人間の葛藤と希望なのだ。

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岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』の天本英世