2022年原著刊行
2023年東京創元社(山田蘭・訳)
ホーソン&ホロヴィッツの虚実コンビの4作目。
今回はなんと、事件の記録者であるホロヴィッツが殺人の疑いで逮捕されてしまうという衝撃の展開。
救えるのはあの男(=ホーソン)しかいない!
このアオリ文句に乗せられて購入した。
3作目『殺しへのライン』で、ちょっと不愉快な感じを覚え始めた二人の関係性にも、なんらかのポジティブな変化があることを期待して。
さらに、本作のキャッチーは、イギリスの演劇シーンが文字通り「舞台」となっているところである。
ホロヴィッツの書いた戯曲『マインドゲーム』が幕を開けた翌日に、殺人事件が起こる。
殺されたのは辛口で知られる演劇評論家の女性で、容疑者に上げられたのはホロヴィッツを筆頭に、『マインドゲーム』に出演する個性的な役者の面々。
今回はまさに演劇に造詣の深いホロヴィッツの薬籠中の題材。
楽屋裏を覗く面白さ満載である。
わかりやすいユーモラスな語り口、読者を飽きさせないストーリーテリングはあいかわらず。
毎度のLGBTネタもちゃんと仕込んである。
毎度のLGBTネタもちゃんと仕込んである。
このシリーズ、そのうちBBCでドラマ化すると思うが、その際、どの役者がホーソン役を射止めるだろうか?
ソルティの勝手なイメージでは、『ダウントン・アビー』で伯爵の従者ジョン・ベイツを演じたブレンダン・コイルが思い浮かぶのだが、コイルはいまや60歳を超えているので、40歳代(多分)のホーソンは難しいだろう。
ホロヴィッツの役はさすがに本人自身というわけにもいくまいから・・・・そうだ、やはり『ダウントン』にゲイの従者トーマス・バロー役で出ていたロブ・ジェームズ=コリアーなんかどうだろう?
LGBT風味が薫って面白そうだ。
ミステリーとしては凡庸で、犯人の見当は全体の3分の2くらい読んだあたりで付いた。
過去の事件が動機をなしていて、そこに関わる人物が犯人だろうと。(当たっていた)
ホロヴィッツにかけられた殺人の疑惑を限られた時間内で晴らすという枷をのぞけば、凝ったトリックで唸らせられるわけじゃなし、ホーソンの推理もさほど目覚ましいものではない。
まあ、そうそう毎度毎度、画期的なトリックや機知に富む手がかりや読者に有無を言わさぬ名推理が提供できるわけもなかろう。
そこはまあいいとしよう。
気になったのは、設定の不自然さである。
ホロヴィッツ作の別シリーズの『ヨルガオ殺人事件』でもキャラクター設定の不自然さについて触れたが、今回も、「どうよ、これ?」と思うような不自然な設定に減点が生じた。
ネタバレになるので詳しくは語らないが、犯人の動機と犯人の選んだ職業の間には根本的な矛盾がある。
松本清張の『顔』と言えば分かる人には分かるだろう。
最後に、気になっていた虚実コンビの関係性については特段の変化はなかった。
創作者としてのホロヴィッツは、謎の多い探偵ホーソンのプライベートを少しずつ明かしていくことで「引き」を作っている。
創作者としてのホロヴィッツは、謎の多い探偵ホーソンのプライベートを少しずつ明かしていくことで「引き」を作っている。
小憎らしい戦略だ。
が、肝心のホーソンの人間的魅力が、巻を重ねるごとにソルティの中では薄れていっている。
5作目を読むかどうか・・・・。(と言いつつ、読むんだろうなあ、きっと)
おすすめ度 :★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
