2017年アメリカ
95分

 ホラーサスペンス。
 都会からペンシルバニアの田舎町に越してきた医師とその妻子に降りかかる、恐怖と危険を描いたB級映画。
 
 なんだかよくわからない映画である。
 森の中の使われなくなったトンネルの中に何かが潜んでいて、そいつが村の子供たちを誘拐し殺しているらしいのだが、最後までその正体は明かされない。退治されることもない。
 そいつは男の形をした黒い影として子供部屋に侵入し、子供を恐怖に怯えさせる。
 醜い化け物となって大人たちの夢の中に入り込んで、金縛りや悪夢を引き起こす。
 犠牲となった子供の幻影を使って、別の子供をトンネルに招き寄せる。
 肝試しで夜間トンネルに侵入した青年たちを虐殺する。
 『13金』のジェイソンのような、『エルム街』のフレディのような、『IT』のピエロのような、『ギリシア神話』のミノタウロスのような、曖昧合成キャラ。
 謎だらけのすっきりしない結末だが、続編が作られることはなかろう。(多分)

 観ていて思ったのは、なぜ子供が黒い影に怯え情緒不安に陥っているのに、両親は同じ部屋で一緒に寝てあげないのだろう?
 ひとり部屋を与えて早くから子供に自立心を植え付けること、夫婦二人の生活を大事にすることが、個人主義の強いアメリカ人にとって大切なのは分かるが、時と場合によろう。
 こういう場合、日本人のたいていの親なら、自分の目の届かないところには子供を置かないのではないか? とくに夜間は。
 映画に出てくる夫婦の家は日本にあったら豪邸と言えるほどデカくて、並みの日本の家(いわゆるウサギ小屋)とは部屋数も間取りも違う。
 いきおい夫婦の寝室と子供部屋が離れているので、いざという時、すぐには駆けつけられない。

 ソルティの子供の頃を思い出しても、10歳くらいまでは一人で寝るのが怖かった。
 兄と一緒の子供部屋であったが、それでも時たま、天井の木目がつくる顔や部屋のすみの暗がりに潜む怪物が怖くて、決死の覚悟で飛び起きて、階下で寝ている両親の布団にもぐりこんだ覚えがある。

 アメリカの家を舞台にしたホラー映画を観ていて思うのは、アメリカ人の抱く恐怖の核にあるのは、幼い頃にひとり部屋で長い夜を過ごさなければならなかった孤独と不安のトラウマなのではなかろうか、ということである。
 もっと親離れをゆっくりさせたほうが、精神衛生上よいのでは? 
 ウサギ小屋にもそれなりの利点があるってことだ。

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ThankYouFantasyPicturesによるPixabayからの画像




おすすめ度 :

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損