1963年松竹
86分、カラー
神保町シアター開催中の『映画で辿る――山田太一と木下惠介』特集で鑑賞。
山田太一の脚本を師匠である木下が映画化した。
川津祐介、松川勉、三上真一郎、山本圭が扮する。
これが映画デビューとなった松川勉が、ひょんなことからテレビドラマの主役にスカウトされる貧乏学生を演じている。
まさに現実そのままの役だったのだ。
そんな友人の幸運をねたむ男を、すでに松竹の人気スターだった川津が演じているのが面白い。
山本圭は剽軽でマザコンっぽいメガネ学生に扮して、味がある。
あまり注目したことがなかったが上手い役者である。
兄・山本學、弟・山本亘ともに、田村兄弟同様、役者3兄弟だったのだな。
複数の青年が主役という点では同じ木下の『惜春鳥』と一対であるが、『惜春鳥』がどちらかと言えばシリアスで、隠微なホモセクシュアリティを匂わす暗喩的作品であったのにくらべると、『歌え若人達』は明るく滑稽味あふれ、後味もいい。
両作に共通している主役は川津のみ。『惜春鳥』で主役だった津川雅彦は本作では特別出演している。
この作風の違いはやはり、本作の脚本が山田太一によることが大きいのではないかと思う。
木下の描く男達のウエットな関係が、ここではカラッとしている。
(お約束の男同士のダンスシーンはあるが・・・)
とにかく観ていてびっくりは、出演陣の豪華さ。
「松竹〇周年記念作なのか!?」と思うほどの人気役者の投入ぶりに、客席で思わず声をあげた。
倍賞千恵子、冨士眞奈美、岩下志麻、東山千栄子、京塚昌子、三島雅夫、益田喜頓、柳家金語楼、渥美清(寅さん)、山本豊三、津川雅彦、佐田啓二、岡田茉莉子、田村高廣・・・・・。
とくに岩下志麻が出ているとは思わなかった。
22歳の志麻サマ、清楚で美しい!
小津安二郎『東京物語』のおっとりした祖母のイメージが強い東山千栄子と、TVドラマ『肝っ玉かあさん』の割烹着のおふくろイメージが強い京塚昌子。
両ベテラン女優の醸し出す滑稽味がたまらない。
公開の63年と言えば、60年日米安保闘争の余韻がまだ残り学生運動盛んだった頃と思うが、本作に出てくる学生たちは概してノンポリである。
大島渚『日本の夜と霧』(1960)に出てくる学生たちとは甚だしいギャップがある。
そのぶん、昭和バブル時代の学生にも、平成・令和時代の学生にも、理解し通じ得るような普遍性がある。
いつの時代も、若者は悩み、葛藤し、遊び、恋する生き物なのだ。
いつの時代も、若者は悩み、葛藤し、遊び、恋する生き物なのだ。
木下惠介作品の中では、トップレベルの楽しさと豪華さ。
弟・木下忠司の音楽も冴えている。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損