日時 2024年4月7日(日)14:00~
会場 東京芸術劇場 コンサートホール
曲目 G.マーラー: 交響曲第2番「復活」
指揮 冨平恭平
ソプラノ 中川郁文メゾソプラノ 花房英里子
合唱 Chorus HA'MON
このオケ、1997年発足ということだが、はじめて聴いた。
これまでの48回の演奏会のうち12回はマーラーの交響曲を取り上げている。
記念すべき第50回(2025年6月1日予定)では第8番『千人の交響曲』をやることが決まっており、それをもって、生前マーラーが完成させた1番から9番までの交響曲を制覇することになる。
マーラーに思い入れのあるオケなのだ。
冨平恭平の指揮は、昨年6月にル・スコアール管弦楽団共演によるマーラー第9番を聴いた。
音の波動がこちらのチャクラを刺激し、陽炎のようにオーラが湧き上がり、脳内ルックス(lux)が上がった。
感動の演奏だった証である。
もっとも、第9番の感動は、チャイコの『悲愴』を聴いたあととドッコイドッコイの暗鬱をともなうので、帰り道にとんこつラーメンでも食べて口直ししなければ、庶民的日常に生還できない類いの感動なのであるが・・・・・。
今回は、聴いたあとの歓喜が約束されている“テッパン”の第2番なので、休憩なしの90分という長丁場にもかかわらず、とくだん事前に構えることなく、帰りに寄るラーメン屋の目星をつける必要もなく、東京芸術劇場の巨大なホールに足を踏み入れた。
席は3階席一番前列の、舞台向かって中央やや左寄り。
舞台後方の高い位置に据えられたパイプオルガンと相対し、オケ全体がよく見える位置であった。
客席の入りは6~7割くらいか。
巨大なパイプオルガンがこのホールの目玉
オケはとても上手で、息が合っており、創立27年の歴史と経験を感じさせた。
ル・スコアールの時と同様、オケの配置が通常と異なっていた。
ル・スコアールの時と同様、オケの配置が通常と異なっていた。
まるで鏡像みたいに左右入れ替わって、コントラバスとチューバが舞台向かって左に位置し、金管とハープが右に寄せられていた。
冨平の好みというか、なんらかの考えによるものなのだろうか。
音楽素人のソルティが言うのは口はばったいのだが、この配置は、音の一体感を高めるより、むしろそれぞれのパート(楽器)の特性を引き立たせる効果があるような気がする。
音楽が一つの大きなうねりとなるのではなく、分散するように響くのだ。
その結果、いつもなら聴き逃してしまうような、地味目な楽器のちょっとしたパッセージが目立つ。
曲を聴きなれた耳ならそこに新鮮さを感じ、異なる色彩の音を微細にわたって変幻自在に編み込んで交響曲という一大織物を仕立て上げるマーラーの天才を再認識することだろう。
ソルティも、「あっ、ここでこんな楽器がこんな介入の仕方をしていたんだ!」と、しばしば驚き、感嘆した。
一方、音が分散して聴こえるというのは、統一体としての曲の生命が犠牲になるということである。
あたかもドイツ製の美しいビスクドールの体内をのぞいて機械仕掛けのからくりを見たかのような感に襲われた。
もっともこれは、オケの配置のためではなくて、ソルティが陣取った場所のせいなのかもしれない。
芸劇の3階席はオケを聴くには遠すぎる。
音の洪水に溺れて、音波に揉みほぐされたい人間には物足りない席であった。
結局、曲に入り込むことができたのは、第4楽章の合唱から。
「コーラスハモン」はこの演奏会のために結成されたそうだが、実によくまとまって、素晴らしいハーモニーだった。
とくに男性陣の張りと奥行きのある声が、曲をまとめあげて、迫力と感動の大団円に導いた。
第50回の『千人の合唱曲』にも参加することが決まっているらしい。
今から楽しみだ。
P.S. 年間100回以上クラシック演奏会に行くという人のブログに、東京芸術劇場の「3階の前席はお薦めできない」とあった。
やはり、そうだったのか・・・。
次から気をつけよう。