2017年河出書房新社刊行
2022年文庫化

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 『日航123便墜落 疑惑のはじまり 天空の星たちへ』(2010年刊行)に継ぐ、元JAL客室搭乗員によるノンフィクション第2弾。
 前作では、墜落事故に関して青山が抱いた様々な疑惑を洗い出し、読者に問いかけるところで終わっていた。
 その後、青山のもとには新たな証言や証拠が次々と集まった。
 そこには、伊豆上空での緊急事態発生の約5分後にジャンボジェット機とそれを追う2機のファントムを静岡県藤枝市上空で目撃したというOLの話や、墜落現場となった群馬県上野村の小中学生らが事故直後に書いた作文、あるいは『天空の星たちへ』を読んで青山に連絡してきた被害者遺族・吉備素子氏の体験談や、現場で収容された完全に炭化した遺体に関する専門家の見解などもあった。
 それらをもとに推理することで、一連の疑惑が解消され、すべてが整合性持って説明し得るような仮説を提示している。
 詳細は本書を読むに如くはないが、かなりの確実性をもって言えることは、
  1. 単なる事故ではなく、自衛隊や在日米軍が何らかの形で絡む事件である
  2. 公式発表された事故原因(圧力隔壁の修理ミス)は疑わしい
  3. 再調査による真相究明を阻む巨大な政治的圧力が働いている

 この32年間、墜落に関する新聞記事等の膨大な資料を、現在から墜落時まで時系列にさかのぼって読み込んでいくと、そこに見えてきたものは、これは未解決事件であるということだ。後から次々と重要なことが判明しても再調査はしない、無視する、という方針を持ち続ける運輸安全委員会の姿勢もさることながら、日本人の特質なのか、何かを隠し通すことが美徳であるという勘違いによって、嘘を突き通すことに慣れてしまっているずるさが関係者の中に蔓延しているのではないだろうか。

 まさに、森永卓郎が『書いてはいけない』で指摘したように、昭和の暗部=タブーなのである。

鍾乳洞


 ときに、ソルティは『天空の星たちへ』について書いた記事の中で、被害者遺族の世話を日航の社員たちにやらせたのは間違いだったと記した。
 昭和時代ならではの“愛社精神”に付け込んで、多かれ少なかれ罪悪感を抱いているであろう末端の社員に遺族の世話を申しつけ、愛する家族を亡くした遺族の遣りようのない怒りと悲しみのサンドバッグにし、社員を長期にわたって多大なるストレスと激務にさらしたことは、それが世間のきびしい非難と悪評をこれ以上避けるために日航のとった謝罪の形式あるいは経営戦略であるとしても、適切な対応とは言えないと。
 が、考えが浅かった。
 遺族の一人である吉備素子氏は青山に次のように語っている。

 とにかく、おかしな話はたくさんあって。遺族もみんな連携しているわけではないのでね。日航の世話役の中でもOさんのように表向きはいい人なんやけど裏ではねえ、実際はあることないこと私らの悪口を言う人もいて・・・・。それぞれが陰で何を言われていたかわからない。遺族間で、相手と組まないように散々吹き込まれている。横のつながりがいまだに持てないんですよ

 遺族間の連携を阻むよう、世話役が会社から言いつけられていた?
 いや、それこそが会社が遺族ひとりひとりにわざわざ世話役をつけた理由だとすると、その奥にある動機は何なのか?
 賠償問題をうまくまとめるため?
 あるいは、事故原因に疑問を抱かせないため?

 2017年に刊行された本書も、今年発行された森永卓郎の『書いてはいけない』もベストセラーになっている。
 いま、JAL123便墜落事故の真実を知りたいという世間の声が非常に高まっている。
 来年はちょうど事故40周年。
 加えて戦後80周年である。
 昭和のタブーはいい加減、清算してもいいのではなかろうか。

 この事件で命を落とした人々への供養は、まだ生きている関係者が「真実を語ること」、それだけである。 


黄色いアイリス





おすすめ度 :★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損