2017年韓国
114分
原題:The King's Case Note

王様の事件手帖

 舞台は15世紀の朝鮮。
 国家は、一族代々資本を握り、陰で政治を操る官僚たちに支配されていた。
 彼らに暗殺された兄王のあとを継いだ国王イェジョン(演:イ・ソンギュン)は、持って生まれた卓抜なる頭脳と身につけた剣の腕、なにより高邁不羈の心をもって、国を改革しようと努めていた。
 地方からやって来た新人史官のイソ(演:アン・ジェホン)は、抜群の記憶力と忠誠心が買われ、王の秘書兼用心棒に抜擢されるが、ドジばかり踏んでしまう。

 ホームズとワトスン、というよりジーヴズとバーティのような凸凹コンビが、怪事件に挑み、推理によって謎を解き明かし、陰謀をたくらむ陰の勢力やその手先と縦横無尽のバトルを繰り広げる。
 文句なく楽しめる歴史劇&娯楽ミステリーである。
 男同士の主従コンビという点で、どうしてもちょっと前に見た『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(西谷弘監督、2022年)と比較してしまうのだが、すべてが段違いのレベルで、制作費の多寡は言い訳にならない。
 それが証拠に同じ2022年には、どう見ても制作費1000万円いかないと思われる『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(竹林亮監督)が公開されているからである。
 日本の映画制作関係者は『MONDAYS』を観て、頭を丸めなければならない。 

 『王様の事件手帖』は、カンヌグランプリを獲った『パラサイト 半地下の家族』(2019)出演で世界的スターとなったイ・ソンギュンを主役に据え、豪華なロケセットや迫力あるVFXも見物で、かなりの予算をかけていると思われる。
 が、そればかりでなく、脚本や演出もよく練られていて、イ・ソンギュンとアン・ジェホンの息の合ったコンビネーションも楽しい。
 とくに、ドジでちょっととろいが、ここ一発大事なところで底力を発揮するイソ役のアン・ジェホンがいい。
 日本の俳優なら、矢本悠馬が適役だろう。
 敵対する勢力の手先を演じるキム・ヒウォンも渋くて味がある。 

 イ・ソンギョンは2023年12月17日に48歳で亡くなった。
 警察に麻薬使用の疑いがかけられていた最中であり、自殺と推測されている。
 この凸凹コンビによる続編が見たかったな。



おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損