2011年東宝、フジテレビ
142分

ステキな』金縛り

 崖っぷち弁護士のエミは、妻殺しの容疑で逮捕された男を助けるため、被告のアリバイを証言できる落ち武者の幽霊を、証人台に立たせようと奮闘する。

 どうやってこういった奇抜なアイデアを思いつくのやら。
 目玉となるアイデアさえ生まれたら、あとは三谷にとってお茶の子さいさいなのだろう。
 笑ったり、泣いたり、セリフや演出や役者の演技に感心したりしているうちに、142分が過ぎた。

 弁護士役の深津絵里も検事役の中井貴一もよいが、何と言ってもこのコメディの成功は落ち武者役の西田敏行にある。
 西田以上にはまる役者が思い浮かばない。
 裁判長役の小林隆もいい味出している。
 脇役の魅力を引き出す三谷の上手さは、市川崑に似ている。

 前記事で、これまで日本になかった三谷作品のコメディカラーを『奥さまは魔女』に比したけれど、本作を見て合点がいった。
 三谷は、『或る夜の出来事』『我が家の楽園』などで知られるフランク・キャプラに心酔している、つまりスクリューボール・コメディに影響を受けたのだ。
 ほかに、ハワード・ホークス『赤ちゃん教育』(1938)やエルンスト・ルビッチ『ニノチカ』(1939)などがよく知られている。
 面白いはずだ。 

スクリューボール・コメディ(Screwball comedy)は1930年代初頭から1940年代にかけてハリウッドでさかんに作られたコメディ映画のサブジャンル。常識にとらわれない登場人物、テンポのよい洒落た会話、つぎつぎに事件が起きる波乱にとんだ物語などを主な特徴とする。「スクリューボール」は当時のクリケットや野球の用語で「スピンがかかりどこでオチるか予測がつかないボール」を指し、転じて突飛な行動をとる登場人物が出てくる映画をこう呼ぶようになった。(ウィキペディア『スクリューボール・コメディ』より抜粋)

 西田演じる落ち武者・更科六兵衛が、証拠物件として、主家である北条氏から拝領した陣羽織を自ら裁判長に提出するシーンで一番笑った。
 この間合いこそ、三谷カラー。




おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損