2017年日本
127分
『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』で、映像作家としての才とソルティ好みを感じた吉田監督。
この作品を観んがために、三島由紀夫の原作をまず読んだのであった。
結論から言えば、原作より映画のほうがいい!
SF小説にも純文学にも詩にも娯楽小説にもなりきれていない、中途半端なぎこちなさがある原作に対し、本作には映画としての、映画ならではの、すっきりした美しさがある。
『桐島』ほどの傑作ではないけれど、忘れ難い佳品である。
時代設定を原作の1960年代から2010年代に変更するに伴い、人類破滅の危機をもたらす要因が、冷戦下の核戦争から地球温暖化に変えられている。
人類救済の使命に目覚めた一家の父親の職業を気象予報士にしたのは、アイデアもの。
60年代だったら機関誌や書籍や講演によって地道に訴えるしかなかった警告が、テレビを通じて一気に大衆に呼びかけられるという、まさに映像ならではの演出効果を生み、原作にはないコメディ色が強まった。
原作では、地球平和のために立ち上がった4人家族に敵対する宇宙人として、仙台在住のダーク3人組を登場させ、小説の終幕において両者間で人類を原告とした疑似裁判が持たれる。飯能4人家族が弁護側、仙台3人組が検察側である。
映画では仙台3人組は出てこない。
よって、原作の主要場面をなす議論も割愛されている。
よって、原作の主要場面をなす議論も割愛されている。
言葉(活字)によってテーマを表現する小説と、映像によって表現する映画とは様式が異なるので、これは正解だったのではないかと思う。
そのぶん、3人組の立場を集約した存在である謎の代議士秘書・黒木が重要キャラとなっている。
黒木役の佐々木蔵之介は、地球人離れした不気味さを宿して、演技の幅の広さを見せつけた。
一家の父親(火星人)役のリリー・フランキーの“真剣になるほどコメディになる”演技、娘(金星人)役の橋本愛の“真剣になるほど冷え冷えと美しくなる”演技。
どちらも印象的である。
どちらも印象的である。
本作は、カルト的人気作として後世に残るんじゃないかと思う。
土星人ソルティ(by細木数子先生)はとても気に入った。
政徳 吉田によるPixabayからの画像>
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損