日時: 2025年1月11日(土)18:00~
会場: すみだトリフォニーホール 大ホール
曲目:
- ベルリオーズ: 序曲『海賊』Op.21
- ドビュッシー: 『海』~管弦楽のための3つの素描
- リムスキー=コルサコフ: 交響組曲『シェヘラザード』
- (アンコール) グリエール: バレエ音楽『赤いけしの花』より「ロシア水兵の踊り」
指揮: 和田 一樹
2025年最初のコンサートは大当たりであった。
やはり、和田一樹&豊島区管弦楽団はやってくれる。
1時間半かけて錦糸町の会場まで足を運んだ甲斐があった。
和田のコンサートではいつものことだが、1曲目からすでにギアがトップに入っている。
出だしから「おおっ!」と驚き、居ずまいを正し、舞台に集中し、音楽に入り込む。
この「つかみはバッチリ!」こそが、他の指揮者を秀抜する和田の音楽の特徴である。
1曲目から「ブラボー!」が飛んだ。
1曲目から「ブラボー!」が飛んだ。
ホールの音響の良さのためもあろうが、豊島区管弦楽団の音のクオリティが以前より1ランクか2ランク上がったような気がした。
まるで、団員がこの年明けに際して、自分の楽器をより高価なものに一斉に買い替えたかのように思われた。
ソロ(独奏)もトュッテ(全奏)も危なげなく、柔軟性もあり、見事に尽きる。
日本のアマオケのレベルを引き上げている筆頭は間違いなくこのオケである。
和田はいろいろなオケで振っているけれど、やっぱり本領を発揮するのはこのオケである。
指揮者と団員との信頼関係と理解の深さが音に表れている。
指揮台の和田の動きも、少年漫画の主人公のように軽やかにして自在。
団員に愛されていることがよく分かる。
団員に愛されていることがよく分かる。
2曲目は中休みといった態。
なんとなくの印象だが、和田と印象派音楽のドビュッシーは合わない感じがする。
和田の“陽キャラ”資質が向いているのは人間的感情に満ちたドラマチックな音楽であって、海や月光といった自然風景を描写する音楽ではどこか物足りない感がある。
もちろん十分に素晴らしい演奏なのだが、1曲目と3曲目の寒気がするほど素晴らしい音楽の中では凡庸に響いた。
3曲目の『シェヘラザード』はフィギユアスケートのプログラム使用曲として用いられることが多い。
2011-12年のシーズンでは、当時国民的アイドルであった浅田真央がこの曲を使って滑っていた。
ただ個人的には、この曲を聴くと安藤美姫(2006-07シーズン)の演技を思い出す。
この曲のエキゾチックで耽美的な雰囲気が似合うのは、浅田真央でなく安藤美姫であった。
その耽美さを引き出したのは、コンサートマスター花井計のヴァイオリンソロ。
十全なテクニックで、美しく官能的な響きと繊細さを表現し切った。
和田の楽譜の読みと構成力の卓抜さは、なんというか、指揮者というよりプロデューサーか映画監督のようで、「この曲はこんな名曲だったのか!?」と驚嘆させられた。
作曲家としての活動が、曲の再構築を可能にしているのかもしれない。
コーダ(終結部)の壮麗さときたら、ヴァーグナーの歌劇を思い起させるレベルで、思わず椅子から身を乗り出した。
ソルティは2階席の中央あたりに座っていて、舞台からの距離はおそらく30mくらいだった。
しかし、3曲目では楽章が進むにつれ、その距離が縮まっていった。
20m、15m、10m・・・・。
最終楽章では、指揮台の上で舞う和田とオケの姿が5mくらい先にあった。
音楽への没入が高まるにつれ、小柄な和田が大きく見えた。
こんな体験は、10年以上前に所沢で佐渡裕の『第九』を聴いた時以来。
広いホールをただ音楽のみが支配していた。
BRAVISSIMO!