2020年アメリカ、カナダ
108分

 アメリカのニュース専門放送局FOXニュースの創立者にして元CEOのロジャー・エイルズは、長年にわたり、女性職員に対しセクシャル・ハラスメントをおこなっていた。
 2016年7月、解雇されたグレッチェル・カーソンが、エイルズを相手にセクハラ訴訟を起こした。
 それを発端に、FOXの花形司会者であるメーガン・ケリーを含む何十人もの女性がエイルズによるハラスメントを次々と告発し、SNSと全米を揺るがすスキャンダルとなった。
 エイルズは辞任し、FOX社は被害女性らに多額の賠償金を支払った。

 本作は、この事件の顛末を描いたドキュメンタリー風再現映画。
 シャーリーズ・セロンがメーガン・ケリーに、ニコール・キッドマンがグレッチェル・カーソンに、マーゴット・ロビーがメインキャスターの座を狙う貪欲な若手職員ケイラ・ホスピシルにそれぞれ扮している。
 3人とも見事な演技で、美しい。(女性の外見を「美しい」というのもそのうちセクハラになりそうだ)

 どうしたって、フジテレビと中居正広をめぐるスキャンダルに重ね合わさずにはいられない。
 アメリカで起きたことは数年のちに日本でも起こる、という習わしどおり。
 時差は約8年。
 日本の場合、発端をつくった被害女性が顔も名前も出していないし、裁判にも刑事事件にもなっていないので、かえって決着のつけ方が難しい。
 世間の関心、とりわけSNSの反応は熱しやすく冷めやすい、長続きしないのが常なので、これといったケジメのつかないうちにフジテレビのスポンサーCMは復帰し、世の関心は別の新たなスキャンダルに移っているのではないかと予測される。

 それにしても、80~90年代には間違いなく時代の先端を走って流行を作り出していたフジテレビが、令和の現在は、日本でもっとも意識改革の遅れた時代錯誤の住人の集まりになっていたという事実。
 お台場とはガラパゴス諸島だったのか。

お台場

 監督のジョン・ローチは、『オースティン・パワーズ』(1997)、『銀河ヒッチハイクガイド』(2005)、『奇人たちの晩餐会USA』(2010)などコメディ映画を得意とする。
 色彩センスに優れた映像は、本作でも存分に発揮されている。

P.S. ロジャー・エイルズは辞任の翌年に77歳で亡くなった。
 


おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損