2月6日、関東地方に吹き荒れた強風が、今年の花粉症の引き金となった。
 昨年はこの時期のスギ攻撃はなんなくやり過ごして、4月中頃からのヒノキ攻撃がひどかった。
 ゴールデンウイークが明けるまで、しんどい日が続いた。

 今年も桜の散る頃になったら気をつけようと思っていたら、いち早くスギに反応してしまった。
 のどの痛み、倦怠感、頭がボーっとするから始まって、悪寒、関節のこわばり、鼻の奥のむず痒さを追加し、「あれ?風邪かな?」と思って葛根湯を呑んだが改善する気配もなく、のど枯れ、くしゃみ、目がしょぼしょぼする、鼻水と続いて、「ああ、花粉症だ」と気づいた。熱はない。
 これから3ヶ月続く地獄のシーズンの幕開けは、まるで末法の世の到来のごとし。

 風の吹く天気のよい日は、不要不急の外出を控える。
 外出時はマスク着用。
 部屋に花粉を運び込まないよう、玄関先で衣服をはたく。
 コロナ禍の延長みたいな日々が続いている。
 なにより残念なのは、コロナ禍の時でさえ実行できた里山歩きができなくなったこと。
 日本の山は約半分が人工林で、人工林の7割はスギとヒノキ。
 ハイキングできるように整備された山は、ほとんど花粉症の爆心地である。
 そんなところに飛び込んでいったら、方向感覚を喪失して道迷いしかねない。
 馬の背をぼーっと歩いて落馬(転落)する危険もある。
 だいたいが、楽しくはない。

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KanenoriによるPixabayからの画像 

 アウトドアが駄目なら、せめてインドアで体を動かして、体力維持とストレス発散をはかろう。
 ジムに行ってプールで泳ごう! ついでに痩せよう!
 ――と気持ちを切り換えた。
 ところが、先日、何気なくスマホで花粉症を調べていたら、とんでもない記事を発見してしまった。

 ドイツの国立環境健康研究センターのKohlhammer氏らが、35歳から74歳の2606名の成人を対象に塩素プールの使用と花粉症発症の関連について調べた研究によると、学童期に水泳プールを毎年3~11回使用していた人は、使用していなかった人に比べて花粉症を発症する可能性が74%高かったといいます。また、過去12カ月間に水泳プールを毎週1回以上使用していた人は使用していない人に比べて花粉症を発症する可能性が32%高く、さらに生涯において水泳プールを使用した経験がある人は使用経験がない人に比べて花粉症を発症する可能性が65%高いこともわかりました。泳ぐ人の尿や汗、その他の有機物質が塩素処理された水と反応して放出される三塩化窒素が影響していると筆者らは考えています。(『医療ガバナンス学会ホームページvol.089 』2019年5月17日の記事より抜粋)

 ドイツの「国立環境研究センター」ってのがどんだけ権威ある研究施設なのか、その記事を紹介した日本の「医療ガバナンス学会」がどういう組織なのか、そもそもこの説を発表したKohlhammer氏がどんだけの研究者なのか、まったく分からないので、これをそのまま鵜呑みにするのもどうかとは思うが、医療ガバナンス学会の理事たちはちゃんとした資格を持った医師らしいので、記事掲載の影響は少なくないと思われる。
 この記事を世の人々が真に受けたら、ジムのプールに閑古鳥が鳴いてしまう、スイミングスクールがつぶれてしまう、学校の体育の授業から水泳が消えてしまう、人はみな金づちになってしまう・・・・なんてことが起こりかねない。オリンピックから水泳競技がなくなってしまうかもしれない。(最近、理由は違うがプールの授業を廃止する自治体が現れている)

 ソルティは、社会人になってからというもの、数ヶ月から数年のブランクは時折あるものの、だいたい週2回以上はプールに通ってきた。
 呼吸器官や肺を鍛え、気道の中を洗い流し、体の血行を良くする水泳は、花粉症に良いものと考えていた。
 それが逆効果だったのか!?
 今さらプールで泳ぐのを止めたところで花粉症予防にはもう遅いけれど、今後悪化させないために、プールはご法度にすべきなのだろうか?
 ちょっと考え込んでしまった。
 
 Kohlhammer氏の報告は2006年のもので、その後、それを否定する記事も肯定する記事も見つからなかった。
 日本の研究者で調べている人はいないのだろうか?
 だいたい、上記のドイツの研究は内容がアバウト過ぎて、いまひとつ信憑性に欠ける。
 ドイツのプールの消毒方法(たとえば塩素の濃度)が不明だし、「学童期に水泳プールを使用しなかった人」、「生涯において水泳プールを一度も使用したことがない人」ってのが、ちょっと想像つかない。(ドイツでも水泳の授業はある)
 「体育の授業はいつも見学でした」という体の弱い人なのか、それともプールの授業というものがなかった時代の生徒、つまり高齢者なのか。いずれにせよ、「プールで泳いだことがない人」の人数は2606名の内、ほんの一握りだろう。統計的に当てにならない母数なのではあるまいか?
 さらには、過去一年「プールで泳いだことがある人」は運動好きでアウトドア派、「泳いだことがない人」は運動嫌いでインドア派であることが想像される。花粉症の発症率との関係は、単に「よく外出するかしないか」の差ということも考えられるのでは?
 あるいは、「水着を着たことがあるかないか」の差かもしれない。

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PexelsによるPixabayからの画像

 そんなわけで、背景の不確かな研究結果を鵜呑みにするのは止めて、プールは続けることにした。
 なんたって、最高のストレス解消&安眠効果があるのだから。
 また、体質改善を目して、しばらく前からコーヒーやアルコールを控え、甜茶とドクダミ茶をブレンドしたものを500㏄ポットに入れて持ち歩いている。(甜茶だけだと甘すぎて飽きが来る)
 葛根湯は効かなかったが、小青竜湯を試したところ、ずいぶん楽になることに気づいた。抗ヒスタミン薬の含まれている市販の花粉症の薬とは違って、眠くなる成分が入っていないし、中国三千年の歴史が安全を証明している生薬のほうが、安心感がある。

 甜茶とドクダミ茶と小青竜湯。
 この三銃士で今年の花粉症シーズンを乗り切るダルタニヤン。

甜茶


ドクダミ茶


小青竜湯