原著発表1936~1959
2011年文春文庫(訳・岩永正勝、小山太一)

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 故エリザベス女王も美智子上皇妃もご愛読というウッドハウス。
 天才執事ジーヴスとぼんくら貴族バーティの主従コンビ――いずれが主かわからない――が活躍する人気抜群の代表作だけでなく、ほかの短編も抱腹絶倒の面白さである。
 本作は、ドローンズクラブという名の、英国の紳士御用達会員制クラブのメンバーたちを主人公とするドタバタ喜劇である。
 難しいことは抜きにして、扉をめくるに限る。
 寝る前のひととき、列車での移動中、昼休みのレストラン、休日のカフェ、歯医者の待合室、サウナの休憩室、ちょっとした暇を楽しいユーモアで埋めてくれる。
 これを読むと、英国紳士のイメージーー常に冷静沈着で感情的にならず、伝統を愛し、誇り高い――がガラガラと崩れていく。
 賭け事好きで金欠病、惚れた女とくに女房にまるきり弱く、酒にだらしない。
 どっちが本当の英国紳士か、かつてオックスフォードで学生生活を送られた天皇陛下に聞いてみたいところである。
 まあ、若い男はどの国だって、同じようなものだ。
 ただ、いまの日本だったら、ドローンズクラブの面々はSNSで袋叩きに合うのは必至である。




おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損