先日職場で話題になったことに、「仕事を当日急に休むことになった場合の連絡を、LINEやメールでするのはありか?」というのがあった。
たとえば、朝起きたら体調が悪くて職場に行けそうにないとか、家族のことで今日中に対処しなければならない用事ができた、なんて場合。
アラ還のソルティ、および50代以上のスタッフは、「やっぱり、常識として電話ですべき」と言ったが、40代のスタッフは、「電話でもLINEでもメールでもかまわないと思う」と言う。
30代以下のスタッフが今のところいないので、平成生まれの意見は得られなかったのだが、ネットなど見ると、「LINEやメールでもかまわない」どころか、休む理由ごとの模範メールのテンプレートまでできている。
普段から電話よりLINEによるコミュニケーションが普通で、業務電話をかけるのに慣れていない若者にしてみれば、「なんでLINEやメールじゃダメなの?」と思うのも無理はない。
実際、なんでLINEやメールはダメで、電話じゃなくちゃいけないのかを、十分な説得力をもって説明できる旧世代は多くないだろう。
「昭和このかた、ずっとそうだったから」
「上司にそう教えられたから」
「欠勤するのに楽をしてはいけないから」
「電話じゃないと、本当に具合が悪いかどうか判断つかないから」
「社会人としての常識だから」
「LINEやメールだと、上司が見落とす可能性があるから」
・・・・e.t.c.
・・・・e.t.c.
いずれもすぐさま論破できるような理由ばかり。
逆に、自分がコロナ罹患したときに思ったのだが、「高熱が出て、のどが痛くて喋るのがしんどくて、すぐにでも横になりたいのに、上司が出勤する9時ちょっと前まで頑張って起きていて電話しなくちゃならない」理不尽さは、ほとんど罰ゲームとさえ思った。
そんな会話を横で聞いていた事務所のリーダーが、「別に自分はメールでも気にしないよ」と言ったものだから、今までの欠勤電話をかける際の決まり悪さはいったい何だったのか――と脱力した。
それからは、当日の休みの連絡はショートメールで済ませている。
就業開始時刻に関係なく、「今日は休もう」と決めた瞬間にメールを送る。
リーダーがちゃんと読んだかどうかだけは、あとでチェックする必要があるが、具合が悪い時などはメール一本送りさえすれば、すぐさま枕に頭をつけて眠ることができるので、助かる。
もっとも、自分が担当している仕事に関して不明なことがあったとき、職場からメールで問い合わせが来るのは覚悟しなければならないが。
職場の中に、インターネットやスマホに馴れた若い世代が増えれば、かつての常識も過去のものになる。
昭和世代はどうしても「仕事で楽をしてはいけない」という求道的あるいは体育会的精神があるのだけれど、楽に仕事して成果が上がるのなら、それに越したことはない。
先日、月に一度の泌尿器科受診があり、待合室で待っていた。
20代くらいの金髪の青年がソルティの前の席に座っていた。
20代くらいの金髪の青年がソルティの前の席に座っていた。
落ち着かない様子でスマホをいじっている。
作業服のようなものを着ているところを見ると、仕事の途中で抜け出してきたのだろうか?
と、おもむろに立ち上がって受付に行くと、窓口の女性にこう尋ねた。
「ここって、レンタルサーバー、ありますか?」
窓口の女性は一瞬びっくりしたようだったが、
「申し訳ありません、そういうのは置いていないんです」と答えた。
青年は座席に戻って、またもやスマホをいじり始めた。
この一連の会話の意味がソルティおじさんにはまったく理解できなかった。
レンタルサーバーが泌尿器科に置いてある、というのは、どういう発想なのだろう?
IT音痴のソルティの乏しい知識では、サーバーってのは、ライブドアとかBIGLOBEとかAmebaとかXREA(エクスリア)とかlolypopといったIT系企業が保有している大型で大容量で高性能のパソコンのことであり、スマホやディスクトップなど個々のパソコンを持つ個人は、企業のサーバーの一角を間借り(レンタル)することで、個人ブログを立ち上げたり、専用のメールアドレスを作ったりできる。いわば、大家さんみたいなものだ。
だから、IT企業の受付で、「お宅にレンタルサーバー、ありますか?」と聞くのなら、話は分かる。
町の小さな泌尿器科にレンタルサーバーがあると思う青年の思考が不思議であるし、それを平気で尋ねられる神経がうらやましい。
それとも、ソルティの聞き違いであって、泌尿器系に悩んでいる青年は、「メンタルサービス(精神的援助=カウンセリング)ありますか」と聞いたのだろうか?
あるいは、青年はほんとは、Wi-Fi(ワイファイ)があるかと聞きたかったのだろうか?
あるいは、ソルティが知らないだけで、最近は普通の店舗や医療施設でもレンタルサーバーを持つところが登場しているのだろうか?
Z世代とのジェネレーションギャップを思いながら、泌尿器科を出て、薬局で薬をもらい、帰り道にあるカフェに寄った。
通信教育のテキストを開いて、2時間ほど過ごした。
空のコーヒーカップを乗せたお盆を返却口に戻すとき、柱の下に設置してある器具に気づいた。
最近、あちこちに見かける器具であるが、ソルティは用途が分からず、利用したこともなく、注意して見たこともなかった。
器具に括り付けられている使用説明書を読んでみたら、スマホのレンタル用モバイルバッテリーだった。
このバッテリーを自分のスマホに接続すれば、移動しながら充電できる。
充電が済んだバッテリーは、バッテリースタンドがある場所ならどこでも返却できる。
ソルティが利用しているレンタサイクルの仕組みと同じである。
利用料金は、1時間未満の持ち運びであれば、税込み330円(セブンイレブンの場合)である。
こんなサービスが始まっていたのか!
ハタと気づいた。
もしかしたら、あの金髪の青年は、「レンタルスタンド、ありますか?」と聞いたのだろうか?
スマホの電池が切れそうだったので、充電したいという意味だったのか?
いずれにせよ、泌尿器科にそのサービスがないことに変わりはないのだが・・・。