1991~1992年講談社『ミスターマガジン』初出
1996年角川ソフィア文庫
副題はちょっと言葉足らず。
内容に即していうならば、「南方熊楠の生態と生涯」であろう。
これは、日本一の妖怪博士・水木しげるによる「妖怪クマグス」に関する記録である。
その特徴は次のようになる。
生息地 紀州和歌山
性質 傍若無人、カッとなりやすい、親分肌、金銭感覚なし、好奇心旺盛
好物 アンパン、酒
特技 自由自在にゲロを吐く、幽体離脱
愛称 てんぎゃん(天狗)
愛称 てんぎゃん(天狗)
生態
- 粘菌にくわしい
- 猫と子供が好き
- 風呂好き、だが不潔
- 夜行性
- 驚異的な集中力と記憶力をもつ
- 普段着は裸
- すぐにチ×ポをいじる
- 猥談が大好き
- 数か国語をあやつる
- 男色の気もあり(コミックでは触れられていない)
まったく人間臭い妖怪である。
キューバでサーカス団の巡業に同行していたとか、イギリスでは大英博物館で英国人と大喧嘩して出禁になったとか、中国革命の父・孫文と馬が合ったとか、菌類に興味を持つ昭和天皇をして和歌山まで足を運ばせたとか、大河ドラマの主人公になってもおかしくない豊富で奇天烈なエピソードの持主。
しかし、大河ドラマはコンプライアンス的に無理だろう。
ボカシばかりになってしまう(笑)。
「猫楠(ネコグス)」というタイトルは、熊楠が飼っている猫の名前から来ている。
ネコグスの目を通して見たご主人・熊楠の日常と半生が語られる、いわば、『吾輩は猫である』みたいな構成になっているのだ。
南方熊楠に託されがちな知の巨人とか偉人とか世界的な生物学者といった近寄りがたいイメージを一挙に打ち壊し、不器用に生きるすべしか持たなかった愛すべき紀州男子の姿を浮き彫りにする力作コミックである。