2013年ちくま文庫

子供の頃から地図を見るのが大好きだった著者が、風変わりな地名をもつ日本各地の土地を訪ね歩く。
青森県の「不魚住・十三・馬鹿川」、秋田県の「心像(こころやり)、雪車町(そりまち)」、神奈川県の「〆引・伯母様」、長野県の「東京・日本記」、滋賀県の「雨降野・酢・相撲」、和歌山県の「八尺鏡野(やたがの)・防己(つづら)」、鳥取県の「耳・白兎(はくと)」、山口県の「セメント町・硫酸町」、愛媛県の「鼠鳴・猿鳴」など、21県72地名が取り上げられている。
読んで面白いのは、地名の由来を探るだけでなく、著者がその土地に実際に足を運んで、山中や海浜や旧道を迷いながら歩いたり、ローカル線や田舎のバスに乗ったり、土地の人と会話して昔話を聞いたり、安価な土産物を買ったり、写真を撮ったり、庶民派旅行エッセイになっているところ。
JTB発行の『旅』という雑誌に連載されていたそうなので、読者の旅心をそそるものとなるよう苦心したのであろう。
JTB発行の『旅』という雑誌に連載されていたそうなので、読者の旅心をそそるものとなるよう苦心したのであろう。
たしかに、「股引の破れを繕いで」旅に出たくなった。
2018年の秋に四国歩き遍路をした時、やはり、偏路沿いの変わった地名に目を引かれた。
電信柱や家の表札横の住所表示、駅名、バス停の名前、そしてスタートからゴールまで旅の友として持ち歩いたへんろみち保存協力会編『四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編)』で見つけた字(あざ)名。
名前の由来が気になったが、1400kmの遍路中はそれを写真に記録したり、街道の人に由来を聞くような余裕などとてもなかった。
いい機会なので、思い返して、ここに上げておきたい。
切幡吉友(きりはたよしとも)
鬼籠野(おろの)
馬喰草(まくそう)
和食(わじき)
御畳瀬(みませ)
浮鞭(うきぶち)
高瀬絶海(たかせたるみ)
久百々(くもも)
宗呂丙(そうろへい)
小才角(こさいつの)
大駄馬(おおだば)
浮穴(うけな)
浮穴(うけな)
常保免(じょうほうめん)
八十場(やそば)
鬼無(きなし)
造田是弘(ぞうたこれひろ)
犬墓(いぬはか)
場所は記さなかったが、圧倒的に高知県に多かった。
なんでだろう?
最後の「犬墓」は、結願した88番大窪寺(香川県)から徳島県に戻る途中の風光明媚な山里である。
弘法大師が行脚に連れていた愛犬の墓があるからという。
地名を楽しむ旅は、スローペースな歩きや自転車だからこそ可能なのである。
車や列車だったら、住所表示を読む間もなく、あっと言う間に行き過ぎてしまって、気づくこともないだろう。
そして、地名くらいその土地のゆかりを饒舌に語るものはない。
次に四国遍路するときは、地名に注目しながら歩きたいものだ。(←行く気になっている⁉)
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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