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 東京調布の深大寺と言えば、蕎麦と国宝の釈迦如来倚像で有名であるが、令和に入って今一つの名物が誕生した。
 日本最大の坐禅肖像彫刻、元三大師像である。

 もっとも、像が造られたのは鎌倉時代であり、蒙古襲来(元寇)との関係が推測されている。
 強大な法力を持ち「厄除け大師」として知られていた元三大師(912-985)の像を、外敵調伏の本尊として造立し、戦勝祈願したという謂れである。

 この像は長らく秘仏であり、50年に一度しか開帳されないので、存在が知られてなかった。
 最後の正式開帳は元三大師1000年忌にあたる昭和59(1984)年だったらしいのだが、世間はバブル突入で国民総浮かれモード。今あるような観仏ブームなど程遠かった。
 むろん、ソルティも覚えていない。

 本来なら次回開帳は2034年になるところだが、令和4~6年に奈良国立博物館の修理所にて像の本格修理を実施、その修理完了を記念して、この春、同博物館にて特別公開を行った。
 それが済んで深大寺にご帰還されたところで、この4月26日から6月2日まで、臨時の「元三大師大開帳」が行われているのである。

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深大寺は天平5年(733)開創の古刹
JR三鷹駅からバスで行った。
バスを降りた瞬間、蕎麦の香りに包まれる。

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本堂
本尊は中国風の宝冠をかぶった阿弥陀如来坐像

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元三大師堂
元三大師の正式の名は、慈恵大師良源(りょうげん)。
第18代天台座主で、比叡山延暦寺の中興の祖とされる。
命日が元月(1月)3日だったことから「元三大師」と称された。
弟子に『往生要集』を著した源信がいる。
拝観料1000円を払って堂内に。

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撮影は禁止。
薄暗い内陣の奥に、黒ずんだ巨大な僧形の元三大師がおられた。
表情険しく、金色に光る目がとても鋭い。
心にやましいところがある人は対峙できないだろう。
寄木造で、内部がくり抜かれている。
頭部は鎌倉彫刻に特徴的な写実の追求が見られるも、体部は全体的に簡素にまとめられており、衣のドレープの表現などは凡庸。
美術的には、唐招提寺の鑑真像六波羅蜜寺の空也上人像には及ばないが、観る者を圧倒する迫力はすごい。

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入堂時にもらったパンフレット
今回の修理の概要が、写真入りでわかりやすく書かれている。
解体したところ、像内にネズミが巣を作っていた(笑)
秘すればゴミ、である。

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像高195.1cm
坐像としては、おそらく日本最大の肖像彫刻だろう。
ちなみに、東京国立西洋美術館収蔵のロダン「考える人」は高さ186cmである。

考える人
負けた・・・・。

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境内に建つ角大師像(中央)
元三大師は、頭に2本の角を生やし、両目を見開き、あばら骨が浮き立つ異様な姿で描かれることもある。俗に角大師(つのだいし)と呼ばれる。
「角大師の護符」は厄除け効果があるとして、江戸時代には大量印刷され、お寺などで配られた。

角大師
子供の頃、ソルティの家の玄関にも貼ってあった。
コロナ禍のときにも、アマビエやスサノオノミコトと並んで活躍された。

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国宝の釈迦如来倚像は、現在奈良国立博物館の超・国宝展に出陣中である。

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蕎麦観音が呼んでいる。

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本堂裏手、神代植物園前にある玉乃屋。
このあたりは国分寺崖線の際にあり、湧き水の宝庫である。

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天ぷらそば(1800円)と深大寺ビール。
十割そばのコシと香り、天ぷらの味と触感を存分楽しむ。
もちろん、〆はそば湯で滋養をつける。

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薫風に吹かれ、緑を愛でながら、打ちたての蕎麦を食べる。
これを仏のご加護と言わずになんと言おう。

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おびんずる様にまたの参詣を約束し、武蔵野の森をあとにした。