米国:1962~68年CBSで放映、カラー
日本:1963~66年TBS系列で放映、白黒

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 本作はソルティが生まれた頃に日本で放送され、高視聴率を記録した。
 当然リアルタイムでは観ていない。
 すでにアメリカではカラー放送だったが、日本でカラーテレビが一般家庭に普及したのは1970年の大阪万博前後なので、日本での放映は白黒にならざるをえなかったろう。
 もちろん、吹替えである。
 その後、日本で再放送された記録がない。
 ある種、幻のコメディドラマとなっていた。
 ソルティが子供の頃に人気を博したアメリカのコメディドラマは、何と言っても、『奥さまは魔女』に尽きる。
 日本人とは違うアメリカ人(西洋人)の笑いのツボを、あのドラマで学んだ。

 登場人物たちの激しい動きのドタバタぶりを楽しむスラップスティック・コメディに対し、脚本や演出を重視し、状況設定(シチュエーション)が生み出す食い違いや不条理さが笑いの要素となっているコメディをシチュエーション・コメディ(situation comedy)という。
 たとえば、バスター・キートンやチャップリンの映画は前者にあたり、『奥さまは魔女』、『アリー my love』、『SEX & CITY』は後者にあたる。
 日本の例で言えば、ドリフの『8時だよ、全員集合』やビートたけし&さんまの『俺たちひょうきん族』は前者にあたり、『男はつらいよ』や三谷幸喜の『やっぱり猫が好き』は後者にあたる。
 日本人は、どちらかと言うと、わかりやすいドタバタ喜劇が好きで、シチュエーション・コメディの傑作は少ないように思う。
 もっともソルティは、NHK大河ドラマを除けば日本のTVドラマをここ30年観ていないので、確証はない。

 シチュエーション・コメディの元祖にして傑作が、この『ルーシー・ショー』及びその前身である『アイ・ラブ・ルーシー』(1951~57放映)と、『ルーシー・デジ・コメディ・アワー』(1957~1960年)である。
 主演は同じルシル・ボール。
 当時のハリウッドで飛ぶ鳥を落とす勢いの人気女優だった。
 彼女のコメディエンヌとしての類まれな才能が完全に開花したのが、ルーシー・シリーズだったのである。

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 ルーシー・カーマイケル(演:ルシル・ボール)は、2人の子供を持つ寡婦。
 街の銀行で副頭取の秘書をつとめている。
 ドジでおっちょこちょいで、有名人好きのミーハーで、物怖じしない度胸の持ち主で、思い立ったらすぐに行動するノリの良さ。
 彼女の回りでは常に、奇想天外な事件が起こる。 
 副頭取のムーニー(演:ゲイル・ゴードン)は、ルーシーの無能ぶりに頭を抱え、失敗するたびに怒鳴り続け、何度も解雇を言い渡すのだが、そのたびにルーシーは奇跡的な運の強さで苦境を乗り越える。

 25分×全98話あるうち、本DVDに収録されているのは20話。
 どの一編もすこぶる面白く、脚本の巧みさや役者の演技の上手さに感嘆しきり。
 ルシル・ボールとゲイル・ゴードンの掛け合い漫才のような息の合った芝居が実に楽しい。
 この2人の天才コメディアンが日本で知られていないのは、実に不可解な話である。

 当時の人気スターが、特別ゲストとして出演している。
 ソルティが名前と顔を知っていたのは、西部劇の大スター、「アメリカの良心」ジョン・ウェイン。
 よもやジョン・ウェインのコメディ演技を観られるとは思わなかった。
 それだけでも、このDVDを購入(中古で1200円)してよかった。
 毎晩1話ずつ観ることに決めていたが、夜が来るのが待ち遠しかった。
 60年経っても古くならない笑いがここにはたんとある。 

 しばらく時間を置いて、また視聴しよう。





おすすめ度 :★★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損