朝5時に目が覚める。
 1時間瞑想。  
 露天風呂独り占め。
 宿の庭を散策。

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夜中に一雨あったらしい。
天気予報では午後からまた雨になるという。

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9時過ぎにチェックアウト。

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千歳橋から守山を望む。
あそこまで歩く。
晴れてなくて良かった

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途中にある眞珠院(曹洞宗)

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ここには源頼朝との恋に破れ、真珠ヶ淵に身を投じた伊東祐親の娘八重姫の供養塔がある。『鎌倉殿の13人』ではガッキーこと新垣結衣が演じていた。

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八重姫の木像

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守山に抱かれた願成就院

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文治5年(1189)北条時政が、頼朝の奥州征伐を祈願して建立したと伝えられる。
その後は北条氏の氏寺となった。

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真言宗のお寺である。
このお大師様、颯爽としている。

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北条時政(1138-1215)のお墓
『鎌倉殿』では坂東彌十郎が好演していたが、ソルティの中では『草燃える』の金田龍之介のイメージが強い。

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大御堂
外国人の男性が案内&解説してくれた。

 寺院建立にあたって、時政は30代の運慶に作仏を依頼した。
 運慶は、現在大御堂にある阿弥陀如来像、毘沙門天像、不動明王像、制吒迦童子(せいたかどうじ)像、矜羯羅童子(こんがらどうじ)像などを造立した。
 その力強く大胆な造形と人間味は、平安後期の仏像の模範であった定朝様(宇治平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像が典型)とは一線を画すものであった。
 これによって、運慶を始めとする慶派は東国の武士たちに贔屓にされ、鎌倉時代に隆盛を極めることになる。
 5体いずれもはんぱないオーラを放つ存在感に満ちた傑作であるが、とくに毘沙門天像が優れていると思う。(5体とも2013年に国宝指定を受けた)

 大御堂の背後に宝物殿がある。
 北条時政の肖像彫刻、北条政子地蔵、両界曼荼羅、上記仏像の中に見つかった木札(そこに時政の発願により運慶が造ったことが記されていた)などが展示されている。

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本堂前の庭
予想を超える素晴らしい仏像との出会いに、すっかり満足した。
来た甲斐あったな。

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五百羅漢
地元の石工さんの指導・手伝いのもと、羅漢づくりに挑戦できる。
眼鏡をかけた羅漢やゴルフクラブを持った羅漢など、ユニークで面白い。

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これはむしろオーソドックス羅漢

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願成就院の隣にある守山八幡宮
治承4年(1180)、この地で頼朝は平家追討を祈願し挙兵。手始めに山木判官平兼隆を討った。

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やっぱり、本殿は山の上にあるのね。

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わざわざ登らなくても良かったのだが・・・。
まあ、足腰を鍛えるためとしよう。

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三島駅に戻って、駅前の寿司屋で刺身定食(1800円)を注文。
今回の旅の一番の御馳走。

 雨が降ったら、まっすぐ帰るつもりでいたが、どうやら持ちそう。
 せっかくなので、前々から気になっていた「かんなみ仏の里美術館」に行くことにした。

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JR函南駅
ここからタクシーで5分の山里にある。

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かんなみ仏の里美術館
2012年に開設された函南町立の美術館。
函南町桑原区で古くから大切に拝まれてきた仏像24体を保管・展示している。

 洞窟のように暗い展示室に入った瞬間、別次元に連れて行かれた。
 「まったく、こんな山里に、よくもまあ、こんな素晴らしい仏像たちが眠っていたものよ!」と、驚いたのなんの。
 もとい眠っていたわけではなく、里人たちに篤く信仰されていたのであるが・・・。

 慶派の仏師と言えば、慶派の祖である康慶(運慶の父)をのぞけば、運慶と快慶が2大巨頭。
 そのほかは、運慶の長男の湛慶(京都・三十三間堂の千手観音菩薩像)、3男の康弁(奈良・興福寺の龍燈鬼像)、4男の康勝(京都・六波羅蜜寺の空也上人像と東寺の弘法大師像)あたりの名が、その代表作とともに上げられることが多い。
 しかし、ここに実慶という仏師がいたのである!

 実慶は康慶の弟子で、運慶や快慶と同年代と推測されている。
 関東中心に活躍していたらしく、ほかに伊豆修禅寺の大日如来像(毎年11月に開帳される)を残している。 
 
 実慶作の阿弥陀如来像、勢至菩薩、観音菩薩の美しいことったら!
 前に立つや、思わず、「うつくし~!」と声に出てしまった。
 慶派ならではの力強い写実性と厳しい表情は備えながらも、奈良・薬師寺金堂の薬師如来三尊像のようなエレガンスをまとっている。
 両脇菩薩のなめらかな腕のラインなどは、奈良・中宮寺の菩薩半跏像のようである。
 明らかに、実慶は、治承4年(1180)に平重衡によって焼かれる前の東大寺や興福寺、および法隆寺や薬師寺の白鳳・天平彫刻たちを学んでいる。
 また、流れるような衣文(ドレープ)の絵画的な美しさや、如来が乗っている蓮華座の細やかな意匠などは、運慶よりむしろ、快慶(京都・醍醐寺三宝院の弥勒菩薩坐像)に通じるところがある。
 3者の上下関係はわからないが、実慶はちょうど運慶と快慶の交接点に位置しているかのように思われる。

 阿弥陀三尊の右側に居並ぶ十二神将も面白い。
 3体が平安時代、4体が鎌倉時代、5体が室町時代以降の作なので、時代ごと様式変化を探るのも一興。
 ソルティはもっとも人間っぽい顔をして動きの静かな因陀羅大将が気に入った。

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 実慶の阿弥陀三尊も十二神将も玉眼――目の部分をくりぬき、内側から水晶をはめ込む技法――がほどこされている。
 周囲が一様に明るかったり暗かったりする場所では目立たないのだが、ここの展示室のように暗い場所で、仏像の顔に懐中電灯を向けるや、玉眼が浮き上がり、鋭い光を放つ。
 数世紀の眠りからいま目覚めたかのように、表情が一変するのである!
 その効果はすさまじく、とりわけ阿弥陀如来像などは、悟りきった穏やかな慈顔と思ってそれまで観ていたものが、光を差し向けるや否や、像の前に立つ者におのれの罪業の深さを自覚させ反省させるかのような厳しさを示す。
 昼の光ではわからない。
 夜の闇でもわからない。
 蝋燭の光が揺らめく夜の堂内においてのみ、仏たちはその真の姿を、煩悩に苦しむ者たちの前に現したのではないかと想像する。 
 これはぜひ懐中電灯持参で拝観してほしい。(受付でも貸してくれる)

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受付でもらったパンフレット
左が実慶作の阿弥陀如来像、右が平安中期の薬師如来像

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この美術館は展示内容も展示の仕方も素晴らしく、スタッフの方々も親切で、(望むなら)懇切丁寧に解説してくれる。
仏像好きなら、至福の時間を過ごせること間違いなし。

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仏像を守って来られた桑原の人々に感謝。

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今回も気づきと驚きいっぱいの良か旅であった。
 


 
おわり