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日時: 2025年6月29日(日)13:30~
会場: 文京シビックホール 大ホール
曲目: 
  • メンデルスゾーン: 劇音楽『真夏の夜の夢』より抜粋
  • マーラー: 交響曲第5番
指揮: 村本 寛太郎

 午前中には奈良大学通信教育学部の学科試験があった。
 試験から解放されたあとの自由な気分ほど、音楽鑑賞に向くものはない。
 たとえ、それがマーラーやショスタコーヴィチであっても。
 よしんばブルックナーでも!

 今回は徹頭徹尾、癒しのコンサートであった。
 『真夏の夜の夢』はシェークスピアのファンタジー劇の付随音楽(BGM)であり、ラストは誰もが知っている『結婚行進曲』で華やかにしめくくられる。
 マーラー5番は、夢見るように甘美なアダージェットで恍惚となったあと、浮かれモードの大団円が待っている。 
 指揮が下りたあとにシビックホールを満たした拍手喝采は、聴衆のボルテージの高まりと満足感の証左であろう。
 全体にパワフルかつメリハリの効いた演奏であった。

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文京シビックホール

 メンデルスゾーンとマーラーの共通点は、ドイツ・ロマン派の作曲家であり、ユダヤ人であること。
 そこが今回のカップリングの意味合いなのかと単純に思って聴いていたら、「なるほど、そうだったか!」とひとつ教えられた。
 『結婚行進曲』の出だしと、マーラー5番第1楽章の出だしは、そっくりではないか!
 『結婚』は「ド」の音、『マーラー5番』は「ド」の♯(シャープ)という違いはあるが、「タ・タ・タ・タン!」を2回繰り返して、そこから前者は明るく、後者は暗く発展していく。
 『マーラー5番』の出だしは、ベートーヴェンの『運命』(ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン!)を意識しているという説はよく耳にするが、よもや『結婚行進曲』と似ているとは気づかなかった。
 いや、むしろ、『運命』より『結婚行進曲』のほうが、音型的に近い。
 で、『マーラー5番』の第1楽章は、マーラー自身によって「葬送行進曲」と名付けられている。
 ってことは・・・・マーラーにとって、結婚とは「人生の墓場」?

 いや、そんなことないでしょ。
 『第5番』を作曲した1902年と言えば、世にも稀なる美貌の才媛、19歳年下のアルマ・シンドラーと結婚した年ではないか。 
 もっとも愛にあふれ、結婚の喜びを心身ともに感じていたはず。
 よもや、数年後にやってくる、アルマと建築家グロピウスとの不倫を予期していたわけではあるまいに・・・。
 それとも、「結婚は人生の墓場(第1楽章)」と自分はこれまで思っていたけれど、そこに待っていたのは「甘美なるエロチシズム(第4楽章)」と「爆発する歓喜(第5楽章)」でした、という惚気混じりの告白ですかあ?
 勝手になさい!

アルマ・シンドラー
アルマ・シンドラー

 いま一つ気づいたのは、この曲は、楽章ごとに主役の楽器が変わっていくような面白さがある。
 第1楽章では打楽器とくに小太鼓の切れの良さが目立ち、第2楽章では木管が夜の森のフクロウやナイチンゲール(夜鳴鶯)のように呼びかけ合い、第3楽章では金管が威勢良く吠え立て、第4楽章は弦楽器の天下だ。そして、第5楽章ですべての楽器が互いを主張し合ううちに、一つの波に統合されていく。
 マーラーは、生前は作曲家としてより指揮者としての評価が高かったと言われる。
 やはり、それぞれの楽器の特性を知り、それぞれの楽器の響きが人間の脳や心に与える影響をよく知っていたからこそ、いろんな色彩や感触の音楽を織り上げることができたのだろう。  

 第5番は聴くたびに発見がある。