1968年東映
96分、カラー
淡島千景、佐久間良子、大原麗子の世代の異なる三美人女優が、第11代将軍徳川家斉(田村高廣)の大奥につとめる三姉妹に扮した豪華時代劇。
山下耕作監督は、三島由紀夫が激賞した『博奕打ち 総長賭博』(1968)、藤純子主演『緋牡丹博徒』(1968)や『日本女侠伝 侠客芸者』(1969)、高倉健主演『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』(1969)、渡哲也主演『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』(1975)、岩下志麻主演『極道の妻たち 最後の戦い』(1990)など、任侠映画で知られた名匠。
暴力に満ちた醜悪な裏社会の描写を敬遠する向きも多いと思うが、抒情性と映像美は折り紙付きで、まずハズレのない監督である。
本作も、女人天下の大奥が舞台だけあって、スター女優たちの美しさとともに、着物や建物や調度の絢爛豪華さに目を奪われる。
タイトルに「大奥」を冠した映像作品の最初は、1967年公開『大奥㊙物語』(中島貞夫監督、東映)と言われている。
主演は本作と同じ佐久間良子で、㊙から想像される通り、エロチシズムたっぷりの時代劇だったらしい。(ソルティ未見)
そのヒットにあやかり、翌年、エロ要素を除いた連続ドラマ『大奥』が関西テレビで放映され、高視聴率を取った。
これによって、時代劇およびポルノ映画の一ジャンルとして「大奥物」が誕生したのである。
ソルティの中では、岸田今日子ナレーションで一世を風靡した1983~84年フジテレビ系列の『大奥』が印象に強いが、物心ついた時から当たり前のように大奥物をテレビで目にしていたし、志村けんや由紀さおりによる大奥ギャグ(「そのほう、いくつになる?」→「十八にござります」→「怒!」)も自然に楽しんでいた。(令和の今は明らかなるエイジ・ハラスメント)
いま、こうして数十年ぶりに大奥物を観た時、女ばかりの閉ざされた空間内の独特の文化や風習やきまり、すなわち“コード(code)”の奇天烈さに驚かされる。
言葉遣いやふるまい、御年寄をトップとする大奥女中のヒエラルキー、将軍様の御寵愛を奪い合う御台所はじめ側室たちの争い、将軍様の目に留まった身分の低い女中(生娘)が夜伽に選ばれて支度する一連の手続き・・・・。
まったく面白い。
だいたい、大奥の目的は将軍様の男児すなわちお世継ぎをつくることにあるので、言ってみればそこは、“世継ぎ制作工房”。
そこに集うあまたの女たちの使命は、将軍様のセックスをサポートすることにある。
側室たちは将軍様の精子の奪い合いを行い、それぞれの局につとめる女中たちは、将軍様の精子をみずからの女主人の卵子に引き寄せるべく、手練手管を使い、陰謀をめぐらすのである。
絢爛豪華な表向きと煩雑で格式ばったコードでカモフラージュしなければ、到底格好のつかない、身も蓋もないエグい世界なのだ。
まあ、テレビや映画のフィクションで描かれている大奥が、実際にあったそれとまったく同じという保証はないが・・・。
淡島千景の貫禄と達者な演技、佐久間良子の品のある美貌と艶やかさ、22歳の大原麗子の初々しさ(演技は下手)は眼福ものである。
大奥の文字通り“お局さま”を演じる三益愛子と木暮実千代の怖いほどの風格は、昨今の女優には望むべくもない。声の出し方からして違う。
そう、大奥物の面白さは、様々な年代の新旧の女優たちが演技の妍を競うところにもある。奥女中(女優)たちの重圧の前には、将軍家斉(田村高廣)もタジタジ(笑)。
クソ暑いこの時節を大奥物で乗り切るのもひとつの手かもしれない。
女たちの戦いに肝の冷えること請け合い。
怪談より怖いかも。
女たちの戦いに肝の冷えること請け合い。
怪談より怖いかも。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
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★★ いい退屈しのぎになった
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