奈良国立博物館の一角を占める仏像館は、仏像専門の展示施設として2010年にオープン。
 飛鳥時代から南北朝時代にいたる日本の仏像を中心に、常時100体近くの仏像を展示している。
 まさに仏像の巨大集積地であり、仏像マニアにとっての聖地である。
 ついにここにデビューした。

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仏像館
一般入場料700円だが、奈良大学の学生は学生証提示で無料
写真撮影可の仏像もある

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現在、吉野金峯山寺の金剛力士像が展示されている

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出山釈迦如来立像(木造、南北朝時代)
苦行で悟りは開けないと知ったお釈迦様が山を下りたところ
このあと乳がゆを飲んで菩提樹の下に座す

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五大明王像(木造、平安時代)
多面多手の奇怪な姿は密教の影響
空海帰国以降の像と知られる

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二十八部衆立像(木造、鎌倉時代)
左より、婆藪仙人、毘沙門天、毘楼博叉天、五部浄居天
力強く写実的な像容はおそらく慶派?

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憤怒の五部浄居天

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金峯山寺仁王門・金剛力士立像(木造、南北朝時代)
康成作、像高約5m
東大寺南大門の次にデカい仁王像
寄木造のため分解して運び入れた(by警備員さん)
天井ぎりのド迫力!

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阿!

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吽!

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血管が蛇のようにのたくっている

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毘沙門天立像(木造、鎌倉時代)
これも慶派だろう

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男女神坐像(木造、平安時代)
ひな人形の原型のように見える

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伊豆山権現立像(木造、平安~鎌倉時代)
静岡県熱海市の伊豆山神社の祭神
これぞ『源氏物語』時代のイケメン!

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獅子(木造、鎌倉時代)
かつて背上に文殊菩薩を乗せていた
主を失って、どことなく淋しげである

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伽藍神立像(木造、鎌倉時代)
「走り大黒」と呼ばれていたが、禅宗寺院を護る伽藍神との説
宅急便のキャラクターにしたら受けそう

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 今回仏像を見るにあたってソルティがチャレンジしたのは、キャプション(解説)を読む前に、仏像の造られた時代を推定するゲーム。
 奈良大学通信教育の美術史概論で、時代ごとの仏像の様式を学んだので、観るだけでどれだけ当てられるものか試してみた。
 結果、約7割くらいの仏像について、正しい(キャプションどおりの)時代を当てることができた。
 難しいのは、鎌倉時代以降の仏像について、鎌倉か室町か南北朝か、見分けがつかなかった。
 〇〇派や仏師の名前まで当てられるようになれば、上級者入り?

 今回もっとも感動した仏像は、金峯山寺仁王像のほかに2点あった。
 1点は、快慶の阿弥陀如来立像。
 よもやここで快慶仏と出会えると思っていなかった。
 建仁元年(1201)に快慶が兵庫県浄土寺のためにつくったもので、奈良国立博物館が預かっているのだという。
 浄土寺の阿弥陀如来三尊像と言えば快慶の代表作(国宝)として有名だが、これはそれとは別物。
 俗に「裸阿弥陀」と呼ばれ、法会の際に裸の上半身に実際の衣を着せ、台座に乗せて信徒の間を練り歩くのに使われた像らしい。
 普通に考えて、あの国宝がなんの広報も宣伝もなく、仏像館に並んでいるわけがなかった。
 しかし、この阿弥陀如来像も素晴らしいことこの上ない。
 像高266.5cmのすらりとした麗姿と、透過力ある眼差しを前にすると、一歩も動けなくなる。
 蜘蛛の巣にかかった虫のように身動き取れなくなってしまうところが、快慶仏の凄さ。  
 巣の中心から放射されたキラキラした糸が、慈しみの光で観る者を包み込む。

 もう1点は、平安時代の十一面観音菩薩立像。
 木造、等身大、なめらかな黒檀のような肌と細くくびれたウエストをもつ非常に美しい像で、インドの女神のごとく下半身を軽く捻った姿勢が官能的である。
 一方、表情はたおやかにして童女のようにあどけない。
 どことなく現役時代の浅田真央に似ている。
 衣の彫りは丁寧で、指先の表情の豊かさは、法隆寺の百済観音か、中宮寺の菩薩半跏像を思わせる。
 この完成度、超国宝展でお会いした京都・宝菩提院の菩薩半跏像に近い。
 一目惚れしてしまった

 帰宅後に調べたところによると、斑鳩の勝林寺が所有していたのだが、現在廃寺になってしまった。
 東京文化財研究所のデーターベースによると、1960年2月の記事に、

奈良県斑鳩町高安の勝林寺では、本堂再建資金の調達と重要文化財の仏像の保持困難を理由に、重要文化財指定の仏像三体を売却する法的手続をとつた。仏像は、木造十一面観音立像、聖観音立像、薬師如来座像の三体で、文化財保護委員会ではこれを許可した。
 
とあるので、このとき奈良博に所有が移ったものと思われる。
 なんと、白洲正子がその著『十一面観音巡礼』の中でこの仏像に触れている。

 殊にくびれた胴から腰へかけての線はなまめかしく、薄ものの天衣を通して、今や歩みだそうとする気配がうかがわれる。十一面観音にはよく見られるポーズだが、この観音の場合は、極端に細い胴と、豊満な腰のひねりによって、その動きが強調され、太っているわりにはひきしまって見える。(白洲正子著『十二面観音巡礼』、新潮社)

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 また会いに行くよ