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 3回目のスクーリングは「美術史特殊講義」。
 講師は日本中世絵画史専門の原口志津子先生であった。

 とにもかくにも、アウトドアの学外実習は灼熱地獄と思い、インドアのみの講義を選んだのだが、同じことを考える人は多いようで受講者は100人を超えていた。
 むしろここは、あえてアウトドア講義を選んで、少人数の中身の濃い授業を受ける特典を狙うというのもありか・・・?
 空調服があれば何とかなるかもしれない。
 来夏は検討に入れよう。

1日目
 午前、午後とも学内講義
2日目
 午前: 奈良国立博物館「世界探検の旅―美と驚異の遺産―」展見学
 午後: 学内講義
3日目
 午前: 学内講義
 午後: レポート作成

 「美術は楽しんでなんぼのもの」
 ――というのが原口先生のポリシーであり、今回の講義も、「いかにして美術から楽しみを見つけるか」というところに焦点が置かれていた。
 まったく同感である。
 芸術というのは食うためには役に立たない代物なので、その存在価値は常に議論の的にされる。
 コロナ禍の時など、どれだけの役者や音楽家や咄家が職にあぶれ、みずからの非力を嘆いたことか。
 平和があって、健康があって、衣食住が保障され、はじめて人は娯楽や芸術活動に目を向けられる。
 人類にとって、芸術は娯楽と同じレベルなのだ。
 であれば、楽しんでこそ、楽しませてこそ、その存在は正当化される。
 (むろん、「楽しい」にもいろんな質がある)

 今回の講義でとくに印象に残ったことをいくつか。
 (実際の講義内容そのままではありません、あしからず)
  • 「美術」という言葉や概念は日本にはなかった。明治の文明開化の折、それまで伝統的に技芸や工芸としてあったものを、西洋の枠組みに合わせて「美術」と「工芸」に分けた。絵画と彫刻(と美術工芸)のみが「美術」とされ、殖産興業に役立つものが「工芸」とされた。そのどちらにも入らない書道がいちばん割を食った。
    ⇒たしかに、西洋にはカリグラフィはあっても「書」という芸術はない。人間の精神や自然の表現である「書」は、東アジア漢字圏ならではのものだ。
  • 装潢師(そうこうし)・・・絵画、書跡、古文書など文化財の保存修理を専門に行う技術者。一般社団法人国宝修理装潢師連盟が資格制度を設けている。
    ⇒はじめて聞いた職名。『大辞泉』(小学館)によると、潢は「紙を染める」の意で、装潢とは本来、「書画を表装すること」を言う。国立博物館の学芸員と装潢師の青年を主人公にした『国宝のお医者さん』(芳井アキ作、KADOKAWA)というコミックがある。探してみよう。
  • 「百人一首」随一の歌聖・柿本人麿の “だらっとした” ポーズの秘密は、中国のある有名な詩人、および仏典に出てくるある有名な在家信者にルーツがあった!
    ⇒そんな関連があるとは思わなんだ。見えているものの背後に隠された意味がある。図像学の面白さよ。

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  • 歴史の教科書でお馴染みの源頼朝の肖像画(神護寺所蔵)が実は足利直義(ただよし)だった件
    ⇒30年前に新進の研究者であった米倉迪夫(よねくらみちお)がこの説を発表した際、喧々諤々の議論が起こった。その後、歴史研究家の黒田日出男や米横手雅敬(うわよこて・まさたか)らの傍証も加わって、今では頼朝説は旗色が悪い。教科書の掲載も見送られつつある。一方、所有主である神護寺は、そのホームページに見るように、頼朝像であることを疑っていない。なので、博物館や美術館がこの肖像を借りるときは「伝・源頼朝」と表記するほかない。頼朝だろうが直義だろうが、美術的価値は変わらないのだが・・・。さまざまな方面からの証拠が積み上げられていって、通説が変わっていくダイナミズムが面白い!
  • 鑑定書が付いている美術品は、時代の混乱期(江戸前期、明治維新、アジア・太平洋戦争後など)に動産移動したことを意味する。つまり、過分に箔付けされた可能性が高く、中身は当てにならないことが多い。
    ⇒今度「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京)を観るときに確認しよう!
  • ほかにも、『鳥獣戯画』や『伴大納言絵巻』や『釈迦涅槃図』など、興味深い話題がてんこもりで、日本絵画に対する関心が高まった。謎を発見することが出発点なんだと思った。
 原口志津子先生は定年間近という。
 この講義に間に合って良かった。

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昼休み中の学食
(社員食堂ではありません)

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学食の日替わり定食「ミックスフライ・ランチ」

 2日目の奈良国立博物館「世界探検の旅―美と驚異の遺産―」展は、今年3月のスクーリングで見学した天理参考館の所蔵品が主だった。
 なので、実質2度目の鑑賞。
 仏像と涅槃図に奈良博物館所蔵のものがあり、これが初見であった。

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奈良国立博物館

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展示内容のためか、外国人入場者が多かった

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釈迦涅槃図(中国・南宋時代、13世紀、絹本)
よく見ると、寝台の前で踊っている人がいる
涅槃は寿ぐべきことなのである

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釈迦如来立像(日本、13世紀、木造)
清凉寺式と言われる模刻像で、生前の釈迦の姿を写し取ったとされる。
仏像が造られ始めたのは仏滅後500年経ってからなので“方便”である。

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兜跋毘沙門天立像(日本、12世紀、木造)
これ、カッコいい!
タロットカードの絵柄のよう

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迦楼羅(かるら)像(日本、13世紀、木造)
千手観音を守る二十八部衆の一人
永久保貴一のコミック『カルラ舞う』で日本でも知られるようになった

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霊鳥ガルーダに乗るヴィシュヌ神(インドネシア、20世紀、木造)
この鳥が仏教に取り込まれて迦楼羅となった

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加彩鎮墓獣(中国、8世紀、陶製)
貴人の墓を守る獣

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魔女ランダの仮面
インドネシア・バリ島に伝わる魔女で人間に災いをもたらす
鬼子母神がバリ化したものという説がある

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霊魂舟ブラモン(インドネシア、20世紀後半、木製)
死と再生を象徴する祭具として成人式に使われる

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パプア・ニューギニアの精霊像(20世紀中頃)

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こういった未開地まで天理教を広めに行ったというのがすごいと思う。
パプア・ニューギニアといったら人喰いの噂で有名だった。

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サラスヴァティー女神像(インド、20世紀後半、金属製)
学問と技芸をつかさどる女神
仏教に取り入れられ、弁財天となった

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ガネーシャ神像(インド、18~20世紀、石像)
密教に取り入れられて聖天様となった

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魔人アスラの仮面(インド、20世紀後半)
いわゆる阿修羅
興福寺の美少年像とのギャップがはなはだしい

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蛇飾壺(エジプト・ローマ時代)

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赤像式アンフォラ(イタリア、紀元前4世紀頃)

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万年壺(中国、8世紀)

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約2時間の世界探検の旅だった
時代や国や民族は違っても、人間がつくる物語には共通項があるなあとつくづく思った。ユングの言う、いわゆる元型か。

 今回のスクーリングの評価は、3日目の講義終わりに提出するレポートも含まれていた。
 課題は初日に告げられていたが、400字詰め原稿用紙最低3枚、できれば5枚以上という指定があり、何をどう書いたらいいか迷った。
 おかげで、今回初めて大学図書館を利用した。
 2日目の講義終了後に図書館に足を運び、司書の方に本を探すのを手伝ってもらい、閉館時間近くまでレポートを書く準備作業に追われた。
 そう。せっかく現地まで来たのだから、大学施設を利用しない手はなかった。
 今後はもっと図書館はじめ学内施設を活用しよう。

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 スクーリング終了後にテキスト科目の筆記試験が待っていた。
 平安文学論である。
 手書き原稿のみ持ち込み可なので、これまでの試験のように回答を事前に暗記する必要はなかった。持参した原稿をただ書き写せばよかった。
 そこは気楽なのだが、持ち込み可ということは、それだけ事前作成した回答の質が問われるということである。
 この科目は採点が厳しいという噂が立っており、ソルティもレポートは再提出となった。
 練りに練った答案を用意して臨んだのだが、結果はどう出るか?
 ほぼ制限時間いっぱい使って、解答用紙の裏面まで書いた。
 さすがに手が痛くなった。

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通信教育学部棟
学科試験の会場だった

 スクーリングも3回目ともなると、勝手がずいぶんわかってくる。
 自動販売機やトイレの場所とか、午前の講義の休憩時間に日替わりランチの食券を買っておくとよいとか(新千円札は使えないとか)、オペラグラスがあると講義中モニターを見るのに役立つとか、大学から高の原駅(近鉄京都線)までの近道とか・・・・。
 今回は、奈良大学から平城(へいじょう)駅まで歩いてみた。
 正門・裏門からの距離はほぼ同じ(1.7km)である。


google map

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奈良大学裏門(サブゲート)

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大阪との県境をなす生駒山が見える

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奈良大学付属高等学校
奈良大学の前身
1925年南都正強中学(夜間制)として薬師寺内に創立
祝!創立100年

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赤いドームは奈良競輪場

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神功皇后陵
第14代仲哀天皇の后
気の強い男まさりの女人として知られる

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八幡神社

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近鉄京都線・平城駅
徒歩20分ほどだった
住宅街や御陵脇を通るので気持ちいい散歩道であるが、平城駅には各駅停車しか止まらない。通過電車を3本見送った。つまり、急行の止まる高の原駅のほうが便利。

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乗り換えの大和西大寺駅構内には飲食店がいろいろある

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マーボー豆腐定食
学割がきく!
陳皮やぶどう山椒が入って深みのある辛さ

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猿沢池周囲は夜間、燈籠が灯される

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対岸から
奈良のいいところは暗さを大切にするところ
街灯がない
そのぶん、池ポチャする人がたまにいるのではないかと思う(笑)
猿も池に落ちる

 今年度のスクーリングはこれで終了の見込み。
 3日間×3回、都合9日間の通学だったが、内容的には平素の3ヶ月分くらい脳を使った気がする。