2022年集英社
2014年8月~2022年4月『週刊ヤングジャンプ』連載
全31巻
落ち着け、シライシ
近所の図書館に全巻揃っているのは知っていたが、予約の順番待ちリストが長いので、落ち着くまで待っていた。
連載終了3年経って、やっとスムーズに借りられた。
思ったより”少年マンガ!”――だった。
もうちょっと、大人向けの内容、大人向けの絵柄を想像していた。
たぶん、タイトルの共通から、白土三平の『カムイ伝』を連想したからだろう。
しかし、連載されていた雑誌は、『ガロ』でも『ビッグコミックオリジナル』でも『モーニング』でも『週刊スピリッツ』でもなく、『ヤングジャンプ』である。
少年マンガで当然なのだ。
『少年ジャンプ』の連載作品にくらべれば、より暴力的、よりエロチック、より蘊蓄多く、心理描写はより複雑ではあるが、基本、『リングにかけろ』や『キン肉マン』や『北斗の拳』爾来の敵味方入り乱れての男たちの肉弾戦、戦闘マンガには変わりない。
『カムイ伝』に熱狂した60年代若者の大人だったこと!
日本人はたしかに幼稚化した(ソルティ含めて)。
もっとも、少年マンガだから減点というわけではなく、面白さは評判通りだった。
多くの登場人物を擁しているにもかかわらず、ひとりひとりのキャラを立たせ、描き分けている。
金塊探しとそれにまつわる戦闘という主筋にからめて、アイヌ文化、北海道の自然、明治史、ミステリー、サイコサスペンス、家族トラウマ、恋愛、変態性欲、コメディ、スプラッタ、マッドサイエンティスト、ロシア革命など、いろいろなジャンルの物語を包含し、読者を飽きさせないストリーテリングは見事。
取材の労力は相当なものだったはず。
画力も高い。
ソルティがもっとも驚いたのは、BL色の濃さ!
入浴シーンが多く、男たちはやたら逞しい裸体を晒す。
その裸体がまた、熊系の男の絵を得意とするゲイの漫画家・田亀源五郎――NHKでドラマ化された『弟の夫』で一般にも知られるようになった――を連想させる筋肉リアリズムである。
ノンケの男たちが、媚薬効果のあるラッコ鍋をそれと知らずに食べたばかりに、食後に入ったサウナの中で互いの肉体を強烈に意識し合う、まるでゲイサウナにおける視線の飛ばし合いのようなエピソードもあり、「きょう日の(ヘテロ向け)青少年誌はここまでやるのか!」と衝撃を受けた。
さらには、美しくもカッコよくもない中年男カップルの命をかけた恋バナもある。
昨今漫画で扱うにはなかなか難しい題材であるにもかかわらず、差別的なふうでもなく、嘲笑っているふうでもなく、絶妙なバランスで乗り切っている。
編集サイドの賢さを感じる。
本作を読んで、自らのゲイ性に目覚めてしまう読者もいるやもしれない。
一番の魅力キャラは、やっぱり、愛され脱獄王・白石由竹。
作中のコミックリリーフ的存在であるが、いつの間にやら、主役の2人・杉元佐一とアシリパを喰ってしまっている。
連載が進むにつれ、読者人気が高まり、白石の存在感と出番が増していったのではないか?
結果、ドジばかり踏んでいつも周囲を呆れさせるこの男が、ラストには美味しいところ総取りの成功者となる。
インパクトつよキャラとして日本漫画史に残りそうなシライシヨシタケの創造こそ、野田サトル&『ゴールデンカムイ』最大の成果と言えるのではないか。
次点で、熊の恐ろしさを普及したこと。
おすすめ度 :★★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
