2018年1~4月TOKYO MXほか
原作 暁佳奈
監督 石立太一
音楽 Evan Call
アニメーション制作 京都アニメーション
全13話+番外編

「映像が美しい!」という評判を聞いてレンタルした。
主人公は少女、という以外は前提知識ゼロだった。
ヴァイオレット=すみれ
エヴァーガーデン=永遠の庭
『秘密の花園』のようなファンタジー&ラブロマンスを漠然と想像していたら、全然違った。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは主人公の少女の名前だった。
そして、ファンタジーやラブロマンスの要素はたしかにあるけれど、物語の主軸は、心を持たない殺人マシンとして育てられた少女ヴァイオレットが、手紙の代筆という仕事を通して様々な人々と出会い、様々な物語を知って、人間らしい心を獲得していく過程を描くところにある。
『秘密の花園』より、『ガラスの仮面』で北島マヤが演じた「狼少女ジェーン」に近い。
あるいは、サイコパス少女の人間復帰物語といった感じ。
ユヴァル・ノア・ハラリは、『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』の中で、人類は進化過程のどこかで「認知革命」を起こしたと述べている。
認知革命とは、「まったく存在しないものについての情報を伝達する能力」の獲得である。
見たことも、触れたことも、匂いを嗅いだこともない、ありとあらゆる種類の存在について話す能力があるのは、私たちの知るかぎりではサピエンスだけだ。(上記書より)
たとえば、「神、家族、先祖、子孫、国家、国民、金、法律、正義、人権、資本主義、共産主義、平和、戦争、会社、貿易、歴史、文明、文化、愛、自由、裏切り、希望、絶望、進歩、幸福・・・・・」
これら実体のない抽象概念を作りだして、それが“さも実在するかのように”扱えるようになった。
言い換えれば、認知革命によって人類は“共同幻想”を持てるようになったのである。
言い換えれば、認知革命によって人類は“共同幻想”を持てるようになったのである。
赤ん坊が子供になり、子供が大人になるとは、自らの属するコミュニティが所有する共同幻想をひとつひとつ内面化していくことである。
それは、周囲の人が使っている人気の高いアプリを、自らのスマホに次々とダウンロードしていく作業に似ている。
同じアプリをたくさん利用している人同士ほど、意思疎通がはかりやすい。
共同幻想あるいはアプリのまたの名を「物語」と言う。
物心つく頃から殺人マシンとなるべく洗脳されたヴァイオレットの心は、いわば赤ん坊のまま。
ひとりの人間として社会生活を無難に送られるようなアプリをまったく持っていなかった。
ひとりの人間として社会生活を無難に送られるようなアプリをまったく持っていなかった。
代筆という仕事を通じて他の人々の「物語」に触れることで、ヴァイオレットは遅まきながら認知革命を起こしたのである。
その触媒となったのが、LINEでもメールでもなくて、手紙であることが、現代の若者にとっては新鮮に映るのだろう。
映像の美しさは評判通り。
大画面で観たら、圧倒されるのは間違いない。
京都アニメーションの作品を観たのはこれがはじめて。
2019年の放火殺人事件はいまも記憶に生々しい。
2019年の放火殺人事件はいまも記憶に生々しい。
亡くなった36人ひとりひとりの「物語」が、本作品に染みわたっている。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
