2022年創元社推理文庫

服部京子・訳


IMG_20250920_075205
 

 『自由研究には向かない殺人』に続いて、女子高生探偵ピッパが活躍するYAM(ヤングアダルトミステリー)。

 前作同様、フェイスブックやポッドキャストやインスタグラムやマッチングアプリなど、インターネット上のソーシャルメディアを駆使して、警察顔負けの捜査をやってのける。

 ITが苦手な人はこのミステリーは理解不能だろう。

 ブログとマッチグアプリ止まりのソルティも、ついていくのがやっとである。

 金田一耕助や刑事コロンボがやっていたような足で稼ぐ地道な捜査ってのは、昭和とともに消え去った。

 

 YAM小説だからと言ってバカにしてはいけない。

 大人社会の複雑で冷徹なリアリティには欠けるものの、ストーリーテリングも構成も伏線配置もうまく、一気に読ませる筆力がある。

 ピッパの直感まがいの推理と行動力(いったい何回他人の留守宅に無断浸入するのやら?)は、爽快ですらある。

 大人と対等に向きあい、時には大人を出し抜くスーパー少女。

 YA読者は、自らをピッパに重ねて、ふだん大人たちから味わわされている屈辱に対して、溜飲を下げるのだろう。

 

 ホリー・ジャクソンはイギリス出身の作家で、本小説もイギリスが舞台なのだが、なぜかアメリカン・ミステリーのような感がある。

 それはおそらく、インターネットの世界は無国籍、無境界、「いつでもどこでも」のユビキタス (ubiquitous)だからなのだろう。

 ミス・マープルが暮らしていたセント・メアリー・ミードのような英国らしさを愛する者としては、いささか残念ではある。


イギリスの村



おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損