2018年講談社
「永世七冠」の称号を持ち2018年に国民栄誉賞を受賞した羽生善治と、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥。
2人の天才による AI をテーマにした対談である。
てっきり、棋士の羽生が科学者の山中に AI について問いかけるスタイルなのかと思ったら、意外なことに逆であった。
羽生が AI にこんなに詳しいとは知らなかった。
だが、考えてみれば不思議でもなんでもなく、将棋の世界ではすでに AI の活用なしに練習したり、勝因・敗因分析したり、新しい手を研究したり、ということは考えられないのである。
プロ棋士の対局中継でも、差し手ごとに将棋ソフトが同時解析して、現在の局面がどちらがどのくらい有利かを瞬時に算出してくれる。
もちろん、インターネット対戦はあたりまえである。
藤井聡太が出現するまでトップを走り続けてきた羽生が、AI に興味を抱き、勉強し、詳しくなるのも当たり前なのであった。
ノーベル賞受賞の科学者といろいろなテーマで対等に話せる羽生の知的能力の高さに感心した。
羽生 AI はデータに基づいて人々が好むもの、選ぶものを予測するのは得意ですが、とんでもないものを好きになる、意外性を愛する人間の可能性は予測できないはずです。それこそ人間にしかできない創造的行為だと思います。羽生 ある特定の目的に限定した専門人工知能は順調に開発が進み、活用されていくと思います。でも一つの分野で学習した知能を他の分野で応用できる、人間の知性のような「汎用性」を持った人工知能ができるのは、まだまだ先でしょうね。
一方、山中は、 iPS細胞発見の経緯や医療への応用の可能性、ノーベル賞受賞の裏話、新しいアイデアが生まれる秘訣、科学研究をめぐる日本の状況など、専門的にならない一般大衆向けトークに長けている様を見せる。
学生時代にラグビーや柔道をやっていて、もともと整形外科医だったという経歴には、驚かされる。
日の当たらない実験室に一日中こもっている白衣を着たうらなり、という科学者に対するイメージが払拭される。
2人のお互いへの敬意とコミュニケーション能力の光る、読みやすくて面白い本である。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
