
日時 2025年9月28日(日)14:00~
会場 朝霞市民会館ゆめぱれす・大ホール(埼玉県)
主催 PASSION事務局
オケ 朝霞フィルハーモニックオーケストラ
合唱 コーラス・リリカ
演出 舘 亜里沙
指揮 高山 美佳
朝霞市民会館に行くのははじめて。
東武東上線・朝霞駅から歩いて15分のところにある。
この駅で降りたのは数十年ぶりだが、駅前がずいぶんと垢抜けていた。
19世紀末にイタリアで生まれた『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』は、いわゆるヴェリズモ・オペラの代表作として知られる。
ヴェリズモ(verismo)とは「現実主義」の意で、それまでのロマンチックで華やかなオペラ、あるいは歴史上の人物や事件を描いた英雄的なオペラとは一線を画し、イタリア南部の貧しい庶民のややもすれば悲惨な日常生活をありのままに描くところに特徴がある。
わかりやすく言えば、三面記事に扱われる類いの、痴情のもつれが起こした血なまぐさい悲劇である。
どちらの作品も1時間強という短い上演時間なので、2つ合わせて舞台に乗せられることが多い。
ソルティは、どちらもライブ鑑賞はこれが初であった。
主催のPASSION事務局は、吉見佳晃(よしてる)というテノール歌手が2000年に立ち上げたクラシックのコンサート企画事務所。
これまでに『椿姫』、『トスカ』、『魔笛』、『蝶々夫人』などの人気オペラや多数のコンサートを企画・開催している。
これまでに『椿姫』、『トスカ』、『魔笛』、『蝶々夫人』などの人気オペラや多数のコンサートを企画・開催している。
「ゆめぱれす」が会場となる機会が多いのは、事務局が朝霞市にある関係からのようだ。
ピエトロ・マスカニーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』
キャスト
- サントゥッツァ: 松平 幸(メゾソプラノ)
- トゥリッド: 堀越 俊成(テノール)
- アルフィオ: 岡 昭宏(バリトン)
- ローラ: 木田 悠子(メゾソプラノ)
- ルチア: 筒井 絢子(アルト)
南イタリアのシチリアが舞台。
シチリアと言えばソルティは、30数年前にイタリア旅行したときにバスで通ったレモン畑を思い出す。
旅の疲れがたまって座席でぐったり眠っていたところに、少し開いた窓からレモンの香りがふわっと入ってきて、驚いて目が覚めた。
作品中最も有名な一曲で、しばしばコンサートで単独演奏される「間奏曲」を聞くと、あの一面のレモン畑の光景を思い出す。
そうした爽やかな印象がある一方で、シチリアはマフィア誕生の地でもあり、情が強く名誉や血縁を大切にするラテンの人々による血なまぐさい事件が多い。
本作も、夫に浮気された妻が、相手の女の亭主に告げ口したことがもとで起こる復讐劇。
歌手がみな粒揃いで素晴らしかった。
サントゥッツァ役の松平は、立派な声を最後まで維持し、堂々たる主役ぶり。
トゥリッド役の堀越も、よく通る朗々たる声で、いやがおうにもドラマを盛り立てる。
アルフィオ役の岡は、顔もスタイルも良く、舞台姿に花がある。
正直、岡がカッコよすぎるので、ローラがアルフィオを裏切ってトゥリッドと浮気するのが不自然に思えたほど。(人間、顔じゃないよ)
色彩を抑えたシンプルな演出が、つれあいの裏切りと復讐という、世界中どこにでもあるドラマの普遍性を浮だたせた。
完成度の高い舞台であった。
ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作曲『道化師』
キャスト
- カニオ:吉見 佳晃(テノール)
- ネッダ:東城 弥恵(ソプラノ)
- トニオ:大貫 史朗(バリトン)
- ペッペ:須藤 章太(テノール)
- シルヴィオ:小川 陽久(バリトン)
こちらも南イタリアが舞台。
旅回り一座の花形、美しき女優ネッダをめぐる男たちの愛と復讐のドラマ。
なんと言っても聴きどころは、主役の道化師カニオ演じるテノールのアリア『衣装をつけろ』である。
フィギアスケートでもしょっちゅう男子選手が使用楽曲に選ぶ。が、表現がとても難しいので、「これぞ」という演技にはなかなかお目にかかれない。
個人的には、高橋大輔が2012-13年シーズンのフリープログラムで滑ったのが印象に残っている。
カニオ役の吉見は、さすが運営者だけあって、存在感ピカイチ。
名唱名演だが、やはり長身のイケメンなので、妻に愛想つかされた男というリアリティは不足気味。もっと老けメイクで良かったかも。
トニオ役の大貫は、喉の不調のためか、声が管弦楽に消されがち。そこを竹中直人ばりの演技力でカバーしていた。
こちらの演出は、『カヴァレリア』とは真逆に、カラフルでポップ感覚あふれる仕上げ。
それがドラマの陰惨さを際立たせるはたらきをした。
指揮と演出がともに女性という舞台はなかなかお目にかかれない。
どちらも、細かいところに目の届いた質の高い仕事であった。
出演の子供たちが可愛かった。



