2024年日本
45分
都営新宿線の菊川駅から地上に上がると、大きな交差点が目の前にある。
一角を占める大阪王将の黄色い看板が目立つ。
そこで腹ごなししてから、横断歩道を渡った3軒目に映画館 Strangerはある。
50席程度のミニシアターであるが、ハイセンスなLINE UPが光り、熱心な映画ファンを集めている。
現在は黒沢清特集と小津安二郎特集をやっている。
このたび、はじめての Stranger体験となった。
映画館 Stranger
落ち着く内装の場内
ソルティは黒沢清はあまり観てなくて、『CURE』(1997)、『カリスマ』(1999)、『回路』(2000年)、『叫』(2007)、『岸辺の旅』(2015)『スパイの妻』(2020)くらい。
よくわからないホラー映画を撮る人、というイメージがある。
本作もまたその例に漏れず、「よくわからなかった」
ある日突然、頭の中にchime(チャイム)が鳴り響き、誰かを刺し殺したくなる――ただそれだけの話なのだが、結局、チャイムの正体は最後までわからないままだし、物語も中途半端に放り投げられて終わってしまう。
45分という短さもあって、これから続く『Chime』3部作のプロローグって感じ。(続くのか?)
でも、さすが「世界のクロサワ」だけあって、怖いことは怖い。
日常に潜む狂気を張り詰めた空気のうちに描き出す手腕は、ブラックジャックのメス捌きのような怜悧さと精密ぶり。
映像だけでなく、音の入れ方も、緻密に計算されているようだ。
上映終了後に、主役を演じた吉岡睦雄氏によるトークセッションがあった。
ソルティははじめてこの役者を知った。
映画だけでなく、テレビドラマやVシネマなどにも数多く出演しているようだ。
撮影時のエピソードなどいろいろ話してくれた中で、「黒沢監督は登場人物のキャラクターをあまり重視していないようだ」というのがあった。
役者が役作りに必要とする人物の過去とか背景とか性格を詳しく設定しないし、役者にもそうした役作りを求めないらしい。
吉岡氏も、その場その場で黒沢監督に言われるままに演じながら、「一体、なんでこの男はこんなことするのだろう?」と設定や筋書きに「?」が飛び交っていたと言う。
たぶん、この映画の一番の恐ろしさは、“理由が一切わからない”ってところにあるのだろう。
どんなに残酷な殺人でも、犯人の過去や性格や背景が説明されて、それなりに“理由(動機)がわかれば”、観る者はそれなりに納得し、収まりがつくので安心する。
たとえば、犯人は被虐待児だった、犯人は社会に対する恨みを抱いていた、犯人は心の病を持っていた、犯人はカルト宗教に洗脳されていた、犯人の脳は宇宙人に乗っ取られていた・・・・e.t.c.
該当する既存の物語を見つけ出し、そこにストーリーが収斂されれば、たとえどんなに恐ろしくてショッキングな映像があっても、一種の安全地帯からそれを観ることができる。
この作品は、そうした“物語化”を許してくれる隙を与えず、観る者を不安定な状態に留め置くゆえに、得体の知れない怖さをもたらすのである。
「実は、チャイムは、地球侵略を狙う宇宙人が発したヒトの脳細胞を破壊する光線だった」と最後に判明すれば、観る者はすっきりした心持ちで家路に着くことができようが・・・・。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損





