日時: 2025年12月29日(月)13:30~
会場: 東京オペラシティ コンサートホール
ソリスト:
ソプラノ テチアナ・ガニナ
メゾソプラノ アンジェリーナ・シ ヴィチカ
テノール ドミトロ・クジミン
バス セルゲイ・マゲラ
指揮: ミコラ・ジャジューラ
ベートーヴェンの「運命」と「第九」のカップリングという贅沢きわまりないプログラムで、今年の音楽シーンを締めくくった。
しかも、1834年の誕生から2世紀近い歴史と伝統を誇るウクライナの名門オケ&合唱団で。
チャイコフスキー、リムスキー=コルサコフ、ラフマニノフ、グラズノフ、ショスタコーヴィチなども、このオケを指揮したという。
むろん、1922~91年までの約70年間は、ウクライナはソビエト連邦の一部であった。
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻によって始まった戦争もなかなか終結が見えないが、その間、たびたびこのオケは来日し、各地で演奏を重ねている。
今回もウクライナ国立バレエ団の『ドン・キホーテ』『雪の女王』『ジゼル』を演奏したほか、1月にはオペラ『アイーダ』『トゥーランドット』上演を予定している。
ソルティは初めて聴いた。
会場の東京オペラシティも初めてであった。
ソルティはアマオケを中心にクラシックを聴いているのだが、アマオケは滅多にここを使わないからである。
会場費が高いせい?
たしかに立派で美しいフォルムである。
たしかに立派で美しいフォルムである。
ただ、アクセス(新宿)やホールの音響効果はいいのかもしれないが、客席の設計はとても褒められたもんじゃない。
ソルティは、ホール後ろ寄りの3階バルコニーの最前列に座ったが、ここからだと舞台が半分しか見えなかった。
もっと舞台寄りの席だと、舞台の2/3は隠れてしまうんじゃないか?
管弦楽はまだしも、オペラなどまったく楽しめたもんじゃない。
高い料金に見合わない。
開演前に先に座っている人の前を通って自分の席に着こうとする人は、手すりから上半身を外に傾けるようにして移動しなければならず、子どもやお年寄りなどの場合、はたで観ていても非常に怖い。
手にしているバッグやスマホを落として、1階席に座っている人の頭に当たったら、大ケガする危険がある。
しかも、手すりの下部を成す木の台座が水平ではなく、外側(座席と反対側)に向って傾斜している。滑り台そのものである。
スマホを落としたら、そのまま台座を滑って、1階席に落ちて行くのは間違いない。
なんてアホな設計をしたのだろう!
もし、子どもが3階席から転落したり、落としたスマホが1階席の人に当たって大ケガした場合、オペラシティは訴えられても文句言えないと思う。(アメリカなら相当な賠償金を課せられるだろう)
山登りが趣味のソルティは、これまで数百の山に登って危険な崖道に数多く出会ってきたが、ここはそれらに匹敵する危険地帯である。
観客のことを全然考えていない人が設計したとしか思えない。
JR京都駅を思い出してしまった。
ホールの管理者もそのことを悟ったらしく、台座に注意書きが貼ってあった。
また、演奏の始まる前に複数の女性スタッフが客席を回って、手に持ったパネルを示しながら、「手すりから身を乗り出さないでください」と注意喚起していた。
アホな設計のせいで無駄な仕事を増やしたのである。
そんなこんなで、演奏が始まる前から苛立たしさを覚えたが、ひとたび演奏が始まるやいなや、苛立ちなど吹っ飛んでしまった。
やっぱりプロは凄い。
やっぱり本場の音は深い。
技術が高いのは当然と言えば当然だが、なにより一つ一つの音がすっきりして美しい。
指揮者の求める音色、自分の出したい音色を自在に出せるのは、楽器を完璧に操ることができればこそ。
指揮者の求める音色、自分の出したい音色を自在に出せるのは、楽器を完璧に操ることができればこそ。
CDでも聴いているような完成度と安定性であるが、それでいて機械的でなく、人間的な情感に満ちている。
んん~、プロだからというよりも、苦難と向き合う者だから出せる音なのかもしれない。
日本のプロオケの優等生的で洗練された響きとは違う。
たぶん、苦難を知る者だけがベートーヴェンと出会うことができるのだろう。
優等生的で洗練されたベートーヴェンが平和の証拠なのであれば、それはそれで祝福すべきことなのかもしれない。
『第九』第4楽章のソリストと合唱も、日本人の歌い手では聞けないたぐいだった。
なんと言っても、声量。
3階後方までしっかり届く各ソリストの朗々たる声と力強さ。
それぞれのメロディラインがくっきりと際立って、ソプラノ・メゾソプラノ・テノール・バスの掛け合い漫才のような四重唱の面白さが、はじめて了解できた。
合唱団は総勢で50名ほどか。
ステージに登場し並んだときは、「こんな少なくて大丈夫?」と思ったのだが、まったく杞憂であった。
日本人100名集めたくらいの迫力があった。
オケに負けていない。
男性陣は20名(テノール、バス各10名)ばかりであったが、女性陣にまったく負けず、しっかりと存在感を示した。
いつもは四声が入り乱れてごった煮のように聞こえる第4楽章中間部の二重フーガの部分も、各パートのメロディが明瞭に聴こえたので、曲の構造が把握できて愉快であった。
やっぱり、ガタイの違いは大きいなあ。 途中からはもう、オケやソリストや合唱団や指揮者の凄さより、ベートーヴェンの偉大さに驚嘆し、楽聖への感謝しか頭にのぼらなかった。
人間は、こんな奇跡のように美しい音楽が作れるほど進化しているのに、なぜ互いに戦うのだろう?
P.S. 東京オペラシティの公式ホームページによると、2026年1月1日~6月30日まで、コンサートホール他は設備改修のため休館するとの由。改善されることを願う。




