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日時: 2026年1月12日(月)14:30~
会場: 東京芸術劇場コンサートホール
曲目:
  • 坂田 晃一: 管弦楽のための「詩篇」― “Don’t Stop Talking About Them”―世界初演
  • マーラー : 交響曲 第3番 ニ短調
      アルト: 池田 香織
指揮: 矢崎 彦太郎
女声合唱: 東京アルカイク・レディースシンガーズ
児童合唱: 東京少年少女合唱隊

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 昨今、アマオケの演奏会においても、錦糸町トリフォニーホール(約1800席)やミューザ川崎シンフォニーホール(約2000席)、そしてこの池袋芸劇(約2000席)のような都内有数の大ホールが満席になることが多い。
 アマオケの質の向上や営業努力もさることながら、クラシックファンが増えているのは――少なくとも都会では――間違いないように思われる。
 また、仏像展や絵画展などに行っても混雑していることが多く、「いつの間に日本人はこんな文化度の高い国民になったのだろう?」と思ったりする。
 考えてみるに、人口の多い団塊の世代が次々と定年を迎え、文化活動に余暇を当てる人が増えたからなのかもしれない。
 ソルティが20年前から続けている山歩きも、ここ数年、一挙に仲間が増えた感がある。
 とくに平日単独行の男性高齢者が増えた。
 平日の登山者が多くなったことは、山中ひとりぼっちの孤独と静寂が得られ難くなった面がある一方、心強くもある。
 加齢による体力低下に加え、最近のクマ騒動もあって、平日の単独行が怖くなったのだ。
 「熊出没注意‼」の標識の下でお弁当を広げていた時代が懐かしい。

熊注意

 ほぼ満席の東京芸術劇場。
 2階センターブロック上段の一番前列に席を取った。
 舞台全体がよく見える。
 音も極めて良かった。
 以前、芸劇の3階席ではあまりいい印象を受けなかった。
 2階席は、ステージから音がじかに飛び込んできて、全身が音に包まれ音波にもみくちゃにされる感覚が得られた。
 実際、今回のマーラー交響曲第3番は、細かいところがどうのこうのよりも、「マーラーという巨大な波に乗って、大海原を滔々と周遊」した気分であった。
 
 第1楽章から、音波は頭蓋骨を突き抜けて脳を振動させた。
 電子レンジに入れた冷凍食品のように、脳は震え、熱を帯び、分子構造を変え、固体から液体になって、頭蓋骨の隙間から脳ミソがとろけ出すかのようであった。
 第2、第3と楽章が進むにつれ、音波の矢は額、胸、腹部と的を移し、突かれたチャクラが口を開き、中から沸き上がる“気”によって体の輪郭がおぼろになった。
 第4楽章のアルトの独唱も効いた。
 いつもは他の楽章に埋もれがちな第4楽章が、これほど際立ったのははじめて。
 独唱者の池田香織がイゾルデやブリュンヒルデなどを歌えるワーグナー歌いであることも大きい。
 強靭で芯のしっかりした意志的な響きが、背骨から尾骶骨へと振動を伝え、骨盤底にあるムーラダーラチャクラに気を集めた。
 第6楽章はもはや音による全身マッサージ。
 客席がそのまま温浴施設にあるマッサージチェアに変貌したかのごとく、全身の筋肉や神経の緊張がほぐれて、気力がよみがえり、免疫値が上がった――ように思えた。
 すっかり音に蹂躙された“オケ初め”であった。

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 今回初めて知ったのだが、新交響楽団のチェロパートの中に、なんと坂田晃一がいた!
 坂田晃一と言えば、昭和時代に活躍した作曲家で、NHK朝ドラ『おしん』、大河ドラマ『おんな太閤記』、『春日局』、アニメ『母をたずねて三千里』、TBS『東芝日曜劇場』などのテーマ曲のほか、西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』、杉田かおる『鳥の詩』、ビリーバンバン『さよならをするために』など昭和歌謡の名曲&ヒット曲を数多く作った才人である。
 ちなみに、ソルティがもっとも好きな曲は、山本達彦の歌った「アゲイン」である。 
 よもや、アマオケの楽団員の一員としてチェロを弾いているなんて、想像もしなかった。
 それもこれも、今回の前プロが坂田晃一作曲『管弦楽のための「詩篇」』であったがゆえに、曲が終わった際に指揮の矢崎がチェロパートの先頭にいた坂田を観客に紹介したがゆえに、知った事実である。
 プログラムによれば「2016年から入団」とのこと。
 ソルティは2016年以降、新交響楽団のコンサートに6回足を運んでいるが、まったく気づかなかった。
 御年83歳。東京芸大の学生時代はチェロをやっていたらしいから、みんなと一緒に音楽を作っていた若かりし頃に戻る思いであろう。
 青春、アゲインだ。

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芸術劇場2階から見渡す池袋駅西口