1983年講談社

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 第29回江戸川乱歩賞受賞作。
 江戸時代の浮世絵師・写楽の正体を追求する若手研究者の周りで起こる連続不審死。
 自殺か他殺か、それとも単なる事故死か?
 名誉と権威をめぐる学界のドロドロを背景に、浮世絵に憑りつかれた男たちの暗躍が描かれる。

 昨年のNHK大河ドラマ『べらぼう』では、まさに写楽誕生の経緯がドラマ化されていた。
 巨悪・一橋治済(生田斗真)を成敗するため、蔦屋重三郎(横浜流星)を中心とする絵師や戯作者のグループは、治済が罠にかけて殺したはずの平賀源内(安田顕)が生きているという噂を広める。そのための方策が、架空の絵師写楽を作り上げることだった。
 つまり、蔦屋の工房(本屋)で写楽は生まれた。 
 もちろん、これは一つの説であり、写楽の正体はいまも謎のままである。

 本書では、「写楽改め昌栄」という名の書き込みのある古い絵が地方で発見されたのをきっかけに、「ついに写楽の正体、判明か!」と騒ぎになっていく。
 その過程で、これまで美術研究者らによって写楽ではないかと推定された複数の人物の名があげられ、それぞれの説の適否が登場人物によって語られていく。
 ドラマを観る前に、本書を読んでおけば良かったなあとつくづく思った。

 一方、ドラマを観ていたからこそ、小説内に登場する人物が親しみやすく感じられ、各人の名前や人間関係が頭に入りやすくもあった。
 たとえば、北尾重政(橋本淳)とか朋誠堂喜三二(尾美としのり)とか山東京伝(古川雄大)とか・・・・。
 年を取ったせいで、登場人物の名前と素性を覚えるのに苦労を感じるようになったのだ。
 長編小説、とくに推理小説には登場人物表をつけることを鉄則としてもらいたい。

 本書の前半は写楽の正体をめぐる謎とその解明、後半が現代の殺人事件をめぐる謎とその解明、という構成。
 よく書けていて興味をそそられるのは前半。
 歴史ミステリーならではの面白さがある。
 それに比べると、後半はぐだぐだで、ミステリーとして出来が良ろしくない。
 プロットが整理されていないので、読んでいて状況がよくわからない。
 推理の詰めも甘い。
 探偵(小野寺刑事)も魅力に欠ける
 前半がなければ、江戸川乱歩賞は難しかったろう。
 期待していただけにちょっとがっかりした。
 まあ、乱歩賞は新人の登竜門なので、完成度を求めるのは酷なのかもしれない。 

 ソルティはミステリー好きを自称するわりには、江戸川乱歩賞受賞作をほとんど読んでいない。
 評判の良いものを中心に、これから読んでいこう。


 
おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損