2001年講談社

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 第47回江戸川乱歩賞受賞作。
 山崎努×反町隆史共演で映画化されたらしい(ソルティ未見)
 
 昔、『十三階段のマキ』という志穂美悦子主演の東映アクション映画(1975)があった。
 小学生だったソルティは、「なんで十三階段なんだろう?」と、不思議に思ったものだ。
 が、1980年にホラースプラッタ映画の金字塔『13日の金曜日』が公開されるに及んで、13という数字が不吉とされる由来を知った。
 13という数字に対するキリスト教由来のジンクスにちなんで、戦後日本の処刑台の段数を十三にしたのだろうか?
 詳細は不明だが、「十三階段」とは死刑、死刑囚のことを指しているのである。

 本書の肝にして成功の鍵は、死刑制度をテーマに据えたところにあろう。
 単なるパズルミステリーを超えた社会派ミステリーの風格がある。
 もちろん、単なるパズルミステリーが社会派ミステリーに比べて劣るというわけではない。
 パズルミステリーの傑作はたくさんあるし、ソルティはパズルミステリーが大好き。
 ただ、作家デビューの登竜門である江戸川乱歩賞は、将来性も考慮され、“なにか書くべきものを持っている=問題意識の高い”書き手が選ばれる率が高いのではないかと思う。
 死刑制度は、現代民主主義社会の問題意識の最たるものである。

 法制度との矛盾
 死刑をおこなう刑務官のストレス
 死刑囚に対する処遇の問題
 “恩赦”という名の不公平
 
 本書では、2人の探偵(元刑務官と元殺人犯)が、死刑囚として留置されている男の無実を証明するというプロットの中で、上記の問題が取り上げられていく。
 論文調に硬い筆致になることなく、会話や回想などに論点を織り込みながら、わかりやすく述べられている。
 処刑の実際を描いた場面など、たいへんリアルかつドラマチックで、新人作家の手になるものと思えない迫真性がある。
 ちなみに、現代の日本の死刑方法は処刑台を使わずに、足元の床板が開いて、自らの体の重さで首が吊られるやり方らしい。

ギロチン

昔懐かし赤い未亡人

 ミステリー部分もよくできている。
 探偵コンビの活躍という常道はやはり効果的だ。
 2人の推理の応酬を読むことを通じて、読者も推理に参加できる楽しさがある。
 頭だけでなく足と体を使った体育会系調査スタイルも面白い。
 双子の兄弟や3Dプリンター(?)など、伏線の仕込みと回収も鮮やか。
 アクションや意外性にも富んでいる。
 江戸川乱歩賞納得の傑作である。

 しいて難点を上げるなら、“後味の悪さ”だろうか。
 ハッピーエンドとはとても言えない終わり方で、ここまで heavy & darkにしないでもよかったのではないかと思った。
 死刑制度云々だけで十分重いのだから。
 ソルティは、日常からの逃避目的でミステリーを手に取るので、基本的にミステリーはそこそこ明るく終わってほしい。
 読後、暗く重い気持ちにさせられるイヤミスはできるだけ避けたいのである。  
 とりわけ、日本の今後に暗さを予感するばかりの昨今は。

 さらに、肝心の死刑制度に対する作者の立場がはっきり示されないことも読後感がすっきりしない一因であると思う。
 結局、死刑YESなのか、NOなのか?
 その立場の曖昧さが、物語の最後になって、プロットや叙述の曖昧さにかぶさって、奥歯に物がはさまったまま幕が引かれたように感じられた。

 さて、高市政権で死刑は増えるのだろうか?

 


おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損