これまで何度も京都に行きながら、京都国立博物館には行ったことがなかった。
京都そのものが一つの大きな博物館&美術館みたいなものなので、あえて行く気にならなかったのが主たる理由である。
例えてみれば、アフリカの草原のど真ん中に作った動物園のようなもので、たくさんの野性の獣が大自然の中で見られるというのに、わざわざ檻の中で飼育された動物を見る物好きもおるまい――といったところ。
でも、それは間違いであった。
明治30年(1897年)オープンした京都国立博物館(当時は帝国京都博物館)は、明治初期の廃仏毀釈によって破壊・消滅の危機に瀕していた京都中の社寺の文化財を守るために生まれた。
国宝に限っても、館が所蔵する作品27件に対し、社寺や個人から預かっているものは87件に上るという。
つまり、京都中から質の高い作品が集められているのである。
所蔵品数は令和元年度末時点で14600件にのぼり、考古・絵画・陶器・彫刻・刀剣・書籍・染織・金工・漆工など様々な分野の文化財が常設展示してある。
ここに来れば、京都選り抜きの文化財がいっぺんに短時間で観ることができるわけで、むしろ、これから京都探訪を始める者が最初に訪れるべきガイダンス的施設なのであった。
京都国立博物館・正門(重要文化財)
赤坂迎賓館を設計した片山東熊による開館当時のもの。
現在は三十三間堂に面した南門が入口となっている。
赤坂迎賓館を設計した片山東熊による開館当時のもの。
現在は三十三間堂に面した南門が入口となっている。

明治古都館(旧本館)
特別展の会場として使用されている。

常設展観覧料は一般700円、大学生350円、18歳未満と70歳以上は無料。
ソルティは国立博物館メンバーズパスで入館。
文化財を学び守る者に対するこのような館の配慮を無下にするかのような、このたびの政府のやり口(国立博物館・美術館への締め付け)には憤りを感じざるを得ない。

平成知新館
所蔵品・寄託品を入れ替えながら、常時展示している。
博物館というより“ミュージアム”といったほうがふさわしいモダンかつクールなデザインで、展示も見やすい。考古史料の並ぶ3階から始めると、おおむね歴史順に観られる。ソルティはじっくり鑑賞して丸3時間滞在した。

1階ロビーのグッズ売り場
印象に残ったもの
- 縄文時代の遺物の中に性具としか思えない男根状の石器があった。さすがに解説にはそうと書かれてなかったけれど、多分そうだろう。“大人のおもちゃ”の歴史は古い。
- 平安時代(11世紀)の絹本着色の仏画「釈迦金棺出現図」にびっくり! なんと、涅槃したはずのお釈迦様がキリストばりに「復活!」して起き上がるという図柄。その理由が、今わの際に間に合わなかった摩耶夫人(お母さん)の嘆きを聞いて慈悲心を起こしたからというのが面白い。
- 1階には仏像が並んでいた。京都・安祥寺所蔵の平安中期の五智如来(木造)が素晴らしかった。五智如来とは、密教における5つの智慧を5体の如来に当てはめたもの。大日如来を中心に、阿弥陀(あみだ)・阿閦(あしゅく)・宝生(ほうしょう)・不空成就(ふくうじょうじゅ)の4如来が並ぶ。それぞれにイケメンながらも表情が微妙に異なっていて、ぜひここは自分の“推し”を見つけたい。ソルティの“推し”は癒し系の宝生如来。
- 1階特別展示室では、雛人形が時代を追って飾られていた。身代わり信仰で川などに流す形代から始まった人形が、次第に人間らしくなり、夫婦雛から宮中の婚礼を表したものへと豪華絢爛になっていくさまが興味深かった。昭和天皇と香淳皇后をモデルにした内裏雛がつくられたとは知らなかった。
- 最後の部屋は若者たちや外国人で混雑していた。「何事?」と思ったら、刀剣の部屋。日本刀ブームとは聞いていたが、若い女性たちが目を輝かせて刀を見てあれこれ批評している姿に、『刀剣乱舞』の人気の凄さを実感した。

世の中、なにが流行るかわからないなあ~
(skefalaccaによるPixabayからの画像)

博物館の裏手には豊国神社総本社がある

むろん祭神はこの猿。失礼、豊臣秀吉公である。
出世開運・良縁成就の神様として崇められている。

伏見城の遺構と伝わる唐門(国宝)

秀吉が文禄4年(1595)に建てた方広寺の旧寺域外周をなした石塁。
方広寺には日本一巨大な大仏さま(高さ19mの毘盧遮那仏)があったが、豊臣家の滅亡、地震、火災、落雷など不運が続き、4代目大仏が焼失した昭和48年(1973)に京都から姿を消した。

豊国神社の参道にある耳塚
こんなものがあったとは知らなかった・・・!

秀吉の朝鮮侵攻は、わが国に活字出版文化をもたらし、有田焼や萩焼など新たな陶磁器を生んだ。が、もちろん陰の部分も大きかったのである。

鴨川にかかる正面橋から北方面を望む
右手奥に比叡山が見える
今さらながら、京都の奥深さ(=日本の歴史の闇)を感じた次第。
