2023年タイ
125分

サッパルー

 サッパルー(สปั เหร่อ)とはタイ語で「葬儀屋」の意。
 貞子系ホラー+ゆるコメディ+VFX恋愛スピリチュアル+『おくりびと』系人生ドラマ=ウミウシ映画といった感じ。
 タイでは2023年の興行収入ランキング1位、日本円で30億円越えの大ヒットを記録し、数々の賞を受賞している。

 期待してレンタルしたのだが、ちょっと拍子抜け。
 つまらなくはないし、凡庸でもないし、演出や映像も悪くないし、役者も個性的で楽しい。
 が、ホラーとしては怖くないし、コメディとしては爆笑するようなところもないし、恋愛映画としては状況が説明不足だし、人生ドラマとしてはまさに『おくりびと』の二番煎じで目新しくはない。
 日本人からしてみれば、なにがそんなにタイ人にウケたのだろう?――と不思議に思うのだが、おそらく本作の地方色――東北方言が強いため標準タイ語の字幕がつけられたという――が、日本に置き換えて言えば、全編山形弁の秘境風土映画みたいな新奇さを与えたのではないかと推測する。

 ストーリーは、妊娠中の女性バイカーオが首つり自殺するというショッキングな映像から始まる。
 恨みをかかえ成仏できずにいるバイカーオの霊があちこち出没し、村中大パニックになる。
 ここまでは順当に正統派ゴーストホラーなのだが、そのあと、彼女の元カレのシアンが出てきて、「今でもバイカーオが好きだ。幽体離脱して再会したい」と言い出し、その秘訣を知る村でただ一人のサッパルー(葬儀屋)に弟子入りし教えを乞う。流れはコメディ&恋愛スピリチュアル路線に転じる。
 シアンは幽体離脱に成功し、幽現界(?)でバイカーオに再会し、思いを伝えることができた。
 なんだかよくわからない。

 バイカーオが成仏できない理由は、普通に考えれば、元カレのシアンではなく、彼女を妊娠させ自殺するまでに追い込んだ今カレとの関係が原因であろう。
 バイカーオが恨みを果たすべき相手は、今カレであるべきだ。
 が、なぜか本作には今カレは姿を現さず、バイカーオが自殺するに至った経緯も描かれない。
 バイカーオの霊が最終的に成仏できたのかどうかも判然としない。
 シアンの自己満足が描かれるだけ。
 なんという中途半端。
 
 一方、村でただ一人の葬儀屋ザックは病魔に侵されている。
 誰かに仕事を継いでほしいが、都会の弁護士を目指すインテリの息子ジャックをはじめ、成り手がいない。
 そのうちザックの病状が悪化し、ジャックとシアンは仕方なく代理で葬儀を執り行うことになる。
 数々の現場を回るうちに、ジャックはサッパルーの仕事の大切さを知るようになる。
 ここはまさに『おくりびと』的ドラマである。
 この部分では、タイの地方の風変わりな葬送儀礼が描かれていて興味深い。(どこまで事実なのかわからないが)

 葬送儀礼ってのは、その土地に住む人間の、あるいは特定の宗教を信仰する人間の死生観、来世観が象徴的に示されている。時代によっても違う。
 ちょっと調べてみると面白いかも。


 
 
おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損