2024年フランス、アメリカ、イギリス制作
142分
凄まじくもおぞましい映画である。
生理的な衝撃はちょっとたとえようがない。
観終わってからウィキで調べ、女性監督の手によるものと知って、納得がいった。
昨今、ジェンダーの違いをもって何かを語るのはリスキーだとは知っているが、やっぱり、女性でないと本作は撮れないよなあと思わざるを得ない。
強いてジャンル分けするなら、SFホラーサスペンスにくくられると思うが、何より顕著なのはエログロである。
大方のヘテロ男性視聴者を喜ばすであろうエロティシズム(たとえば、レオタードを身に着けた若い美女のピチピチした肢体)がふんだんにあり、男たちの身体の一部を変貌させるものと思われる。(ソルティはゲイかつシニアなのでそよとも動かなかった)
ルッキズムやエイジハラスメントに対する批判のかまびすしい昨今、これほど女性の“若さと美貌の特権”を前面に押し出した映画も珍しい。
女性監督だからこそ批判を恐れずにできたのではないか、と思うのである。
ファルジャ監督の声が聞こえるようだ。
「わかってるわよ。あんたら男は、こういうのが好きなんでしょ?」

こういうの
また、グロテスクについて言えば、デミ・ムーア扮する往年の美人女優がどんどん醜くなっていく過程が描かれるのだが、そのグロテスク化の度合いが限界突破している。
これもまた、ヘテロの男性監督だったら、ここまで女性を貶められないのではないか、ここまで生理的嫌悪を極められないのではないかと思われる。
思い出したのが、吉田秋生の漫画『吉祥天女』である。
美貌の女子高生ヒロイン叶小夜子が人の来ない化学実験室で不良男子生徒たちに襲われそうになる場面で、小夜子は手にしたナイフで一人の男子生徒の片耳をざっくりと切り落とす。
床にぽたりと落ちた耳と血にまみれたナイフを見てひるむ不良達を見て、小夜子は言い放つ。
「・・・血がこわいの? 女はね、血なんかこわくないのよ・・・。だって毎月血を流すんですもの」
つまり、生理的なグロに対する耐性において、男性は女性に敵わないと思うのだ。
80年代初頭、『エレファント・マン』という、英国に実在した畸形の男の生涯を描いた映画があった。
「人間は内面の美しさこそ大切」というヒューマニズムのオブラートに包まれていたが、映画が大ヒットした一番の理由は、珍しい見世物に人が集まるように、好奇心から多くの人が映画館に足を運んだからであった。
次第に醜く人間離れしていくデミ・ムーアの最終形態は、エレファント・マンを軽く凌駕するグロテスクさと阿鼻叫喚の断末魔で、「ここまでやるかあ?」と息をのんだ。
老いと美貌の衰えに苦しむ往年の美人女優という、まさに自身と重ね合わせられてしまうリスクをあえて引き受けて、見事に演じきったデミ・ムーアの役者根性にたまげた。
吉永小百合には絶対にできない役である。
エログロてんこもりな一方で、美術や映像はスタイリッシュで、演出も小気味いい。
再生医療で若く美しく蘇ったデミ・ムーアの“分身体”を演じるマーガレット・クアリーが、ほんとに美しくてエロい。
野心家で調子のいいTVプロディーサーを演じるデニス・クエイドも、竹中直人的怪演が光っている。
エロくてグロくて、美しくて醜い。
「きれいはきたない、きたないはきれい」
シェークスピア『マクベス』に出てくる魔女たちのセリフのような作品。
元ネタは、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』あたりか?
元ネタは、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』あたりか?
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損

