2025年フランス・イラン・ルクセンブルク合作
103分
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 カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したサスペンススリラー。
 前評判が高いのが気になって、ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞。
 土曜夕方の回で5割くらい入っていた。

 結論から言えば、「確かに面白いけれど、前評判はあおり過ぎ」と思った。
 販促チラシにある「魂が震える衝撃のラスト」、「これほど素晴らしい映画を見たことがない(マーティン・スコセッシ)」、「渦巻く重厚なスリルと深遠なミステリー」、「社会派サスペンスの最高峰」といった文句は、ちょっと持ち上げ過ぎ。
 まあ、映画の過大広報は、「全米○○○!」をはじめ、今に始まったことではないが・・・・。

 ソルティが仙台にいた90年代初頭、渡辺文樹監督の自主制作映画『ザザンボ』が、繁華街にある市民会館で上映されたことがあった。
 上映日の数日前から、街中の電柱という電柱に、毒々しい手書き文字を添えた宣伝ポスターが張りめぐらされた。
 具体的な言葉は忘れたが、「嘔吐者、続出!」とか「怖い、怖い!」とか「見たら一生後悔する!」とか、美しく穏やかな杜の都にふさわしくない過激な言葉が並んでいた。
 渡辺文樹という監督を知らなかったソルティは、当時住んでいた家が市民会館の近くだったこともあって、当日足を運んだ。
 びっくりしたことに、1000席以上の大ホールが満員であった。
 それも中学生や高校生の姿が目立った。
 
 『ザザンボ』は、1992年に福島県田村郡三春町で起きた中学生の自殺事件の真相を追うドキュメンタリーである。
 作品内で渡辺が匂わせた真相については物議を醸したみたいだが、映画自体はどちらかと言えば地味なつくりで、ホラー的なところもスプラッタ的なところもエログロ的なところもなかった。
 何を期待したのか知らないが、「はめられた」と気づいた中高生たちが、不満と退屈から途中でざわめき出したのが可笑しかった。(ソルティも同じ穴のムジナか・・・)
 あとから知ったのだが、渡辺はあちこちの町で、この手を使って客集めをしていた。
 まったく人騒がせな男である。
 数年後、『バリゾーゴン』というタイトルの渡辺の新作がまたしても仙台にやってきた。
 同じような光景が町中に見られた。
 今度はソルティも足を運ばなかった。

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 本作はイランが舞台。ここ数十年のイランの政治状況が背景にある。
 時の政権への抗議活動をしていた人々が逮捕抑留され、刑務所内で看守「義足の男」から拷問を受け、人生を狂わされた。
 数年後、なんとか社会復帰し、平穏な生活を送っていたところ、ある事故がきっかけで、かつての看守らしき(?)男と再会する。
 復讐心燃え上がる被害者たち。
 「義足の男」を車内に拉致監禁し、連れ回すことになった。

 ソルティはイランの政治情勢に詳しくない。
 もう少し背景を知っていたら、より深く、より面白く、観られたのかもしれない。
 ただ、中心テーマはイランの政治や社会を描くところにあるのではない。
 もっと普遍的に、“復讐と許し”と言っていいだろう。
 重く深刻になりがちなテーマだが、それをイスラム的庶民感覚とドタバタ喜劇風ユーモアをまじえて、スリリングに描いている。
 「予測不能な物語」というチラシ文句だけは過大広報ではない。
 ラストシーンの解釈は、観る者ひとりひとりに託されている。
 これをどう解釈する人が多いかで、世の復讐の連鎖が止まるか否かが占われている。
 
 高評価の背景には、いまのイラン・アメリカ・イスラエル情勢に対する国際映画界の強い憂慮と平和への願いがあるのだろう。

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 有楽町のゴジラ


おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損