2023年東宝
125分

 「ゴジラ マイナスワン」と読む。
 ゴジラシリーズ37作目、ゴジラ生誕70周年記念作という。
 ゴジラもまもなく後期高齢者か・・・。
 
 ソルティが観たのは、第1作『ゴジラ』(1954)から第14作『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)までなので、約半世紀ぶりの再会。
 よく利用する図書館の新着DVDコーナーに置いてあったのを手に取り、「神木隆之介主演」というのが気になって借りてしまった。
 あとから気づいたが、有楽町で『シンプルアクシデント』を観た帰りに東宝日比谷ビルの前を通って、高さ約3mのゴジラ像を見た。
 それが意識下に残っていたのである。
 それがなかったら、そもそもDVDを手に取らなかったろう。
 怪獣映画はとっくに卒業したつもりになっていたから。

 こうしてブログに記録しておいたおかげで、その因縁に気づけたわけだが、そうでなかったら、久しぶりにゴジラ映画を見ることにした理由を何かしら“でっちあげた”ことだろう。
 自己決定というものが、自分ではまったく気づいていない因縁に支配されているという、ニコラ・テスラの言葉を実感した。

有楽町ゴジラ像
 ラクチョウのゴジラ像

 思ったよりずっと、面白かった。
 ゴジラが登場し艦船や街を破壊するシーンのリアリティと迫力に圧倒された。
 CGを駆使した最新のVFX(視覚効果)や音響技術の凄さをまざまざと感じた。
 家のテレビで観てそう感じるのだから、映画館の大スクリーンと立体音響システムで体感したら、現実とフィクションとの区別がつかなくなりそう。
 とくに、ゴジラの足音や咆哮は、観終わった後も耳について離れなかった。
 世界中でヒットしたのも納得。
 円谷プロ特撮で制作された往年のゴジラ映画に、子供だったソルティは恐怖を覚えつつも夢中になったものだが、過剰な刺激に日々さらされている令和の子供たちはどうなのだろう?

 ゴジラ登場シーンのスペクタクルに比べると、それ以外の日常シーンの作りの弱さに鼻白んだ。
 太平洋戦争敗戦直後の日本が舞台なのだが、その雰囲気が希薄なのである。
 これはおそらく、山崎監督(1964年生)をはじめとする制作者側も、出演陣では年長の佐々木蔵之介(1968年生)をはじめとする役者側も、実際の戦争や焼跡の日本を知っている人がいなくなったことが大きいのだろう。
 自らのリアルな体験を演出や美術や演技に生かすことができないのだから仕方あるまい。  
 脚本やセリフや演出についても「紋切り型でベタ過ぎる」と思ったが、考えてみたら、観客の多くは子供たち。わかりやすくするのは鉄則であった。
 大人の映画ではないのだから、これはこれで良いのである。
 子供の頃の自分も、怪獣登場シーン以外のストーリーはよく理解できないまま観ていたっけ。
 登場人物も、善人と悪人の別、敵と味方の別くらいしか認識していなかった。

 そういった“マイナス”然らざるを得ない点を考慮するなら、良くできた映画である。
 お国と天皇の為に死ぬための「特攻」という“不都合な真実”を否定して、命を無駄にしない「特攻」という物語に書き換えた監督の意図はすばらしい。
 役者陣もいい演技を披露している。
 神木隆之介はあいかわらず表情演技が巧み。
 吉岡秀隆は「滑稽味ある学者先生」という、子供たちが好きそうなキャラに見事に化けている。
 安藤サクラは怪獣映画でも常と変わらぬ演技力の高さを見せつける。(最後のクレジットを見るまで、江口のり子と思っていた)
 駆逐艦「雪風」元艦長を演じる田中美央という役者は初めて知ったが、いい味を出している。昔なら佐分利信や三船敏郎や小林佳樹、ちょっと前なら三浦友和や香川照之あたりが演じた役である。

 御年74歳のゴジラは、いまや日本の最長にして最強のアイドルである。
 70年間第一線で活躍し続けている現役のスターは、黒柳徹子と美輪明宏くらいなものであろう。
 その経済効果といい、文化交流における国際貢献の高さといい、国民栄誉賞にこそふさわしいとおもわれる。
 が、初代ゴジラが反核の意図から生まれた来歴を考慮すると、今の政府がそのような処置をとることはないだろう。(反戦を強く訴えている黒柳と美輪についてもまた同じ)
 まだまだゴジラに活躍してもらわなければ。




おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損