現在、歴史文学論に取り組んでいる。
 テキストは浅田徹著『和歌と暮らした日本人』(淡交社)。
 一般向けに書かれた教養本なので、文字が大きく、小口も薄く(180ページほど)、文章も平易で読みやすい。
 初学者が和歌の世界について知るには恰好の本である。
 これまでに履修した科目のテキストの中で、一番ラクに、楽しく読めた。

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 提出レポートもまた、サブテキストの『学習指導書』に課題文が載せられ、考察すべきポイントやレポートのまとめ方について、懇切丁寧に記してある。
 その指導に従ってレポートを作成すればいいので、これも比較的ラクに、迷いなく書き上げることができた。(『考古学概論』のレポート作成時とは対照的←注:新しい『学習指導書』では設題が一部変更されている)
 ソルティはもともと和歌は好きなほうなので、取り組みやすかった。
 先日、レポート合格通知を手にした 

 いまは、科目試験のための答案を作成しているところである。
 この4月から出題範囲が5題から10題に増えたが、思った以上にたいへん。
 「テキストもレポートも、易しくてラッキー!」と思っていたら、そうは問屋がおろさなかった。
 というのも、「楽に読めるテキスト=内容が軽い」ので、テキストだけでは答案を作成することができないのである。
 1~10番まで10個の課題ごとに、テキスト以外の関連本を探し出して、読んで、設題の意図に添った和歌の具体例を見つけて、まとめなければならない。
 やっと8番の『武士にとって歌とはどのようなものか』までたどりついたが、ここまでにいったい何冊の本を借りたことか!
 やっぱり、どの科目も一筋縄ではいかない。

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 先日、日比谷図書文化館に行ったら、『古今和歌集と伊勢物語』と題する展示の案内チラシ(上記)を見つけた。
 千代田区神田にある天理ギャラリーで、平安末期から江戸時代までの『古今和歌集』と『伊勢物語』の写本(古典籍)が展示されているという。
 主催は奈良の天理大学附属天理図書館。
 文化財学購読Ⅱのスクーリングで天理参考館にお邪魔したので、親しみを感じる。 

天理参考館

 『古今和歌集』と言ったら、和歌のバイブルである。
 和歌について学ぶ者は、『古今和歌集』を避けて通れない。
 とくに、紀貫之が書いた序文(仮名序と言う)が有名である。

力を入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の仲をもやはらげ、たけき武士の心をも慰むるは歌なり

 和歌には、天地や神仏の心を動かし、人の感情を和らげる不思議な力がある、という。
 ここはひとつ、『古今和歌集』の写本に接して、和歌の霊力をこの身に充填し、答案作成を一気に乗り切ろうと思い、神田に足を運んだ。

外堀通り
外堀通り
地下鉄淡路町駅下車、徒歩3分

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天理ギャラリーのある東京天理ビル
ギャラリー内は撮影禁止だった

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 藤原俊成筆の『古今和歌集』写、藤原定家筆の『伊勢集』写、寛政の改革を行った松平定信筆の『小野小町集』写――定信の重箱の隅をつつくような几帳面な性格がうかがえる細かさ!――など、平安末期から江戸時代までの写本が40点近く展示されていて、なかなか見ごたえあった。
 また、書誌学で習った日本の古典籍の装訂の歴史の復習にもなった。
 上記画像は、三十六歌仙のひとり、平安時代初期の歌人・伊勢。(トーハク開催中「アイルランド チェスター・ビーティー コレクション」に出展の絵巻より)

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天理参考館発行のパンフレット類
世界各地の民俗資料、考古資料のコレクションは一見の価値あり!

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最寄りの「ゆで太郎」で腹ごなし

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幸せとはかき揚げの最初のひと齧り

 午後から日比谷図書文化館で、記念講演『校訂と注釈―古典学の断面―』があった。
 院政期と戦国期における『古今和歌集』の写本に関する話という。
 講師は、慶應義塾大学文学部教授の小川剛生(たけお)氏。中世文学・和歌文学を専門としている。
 内容的に小難しそうな感じはしたが、答案作成の参考になればと思い、参加した。
 

 参加者100名以上いただろうか。
 各人がどういった動機から参加しているのかは分からないが、実社会ではほとんど役に立たない、こんなトリビアなテーマに関心を持ち、休日の午後を当てる人が少なくないことに驚いた。
 天理教関係の人が多かったのか?
 それとも、現在進行形で国文学を教え、学んでいる人たち?
 自分がその中にいるのが不思議な気がした。
 それもこれも、奈良大学通信教育学部に入学したからこそである。

 思えばこの一年半あまり、これまで行ったことのなかった文化施設に足を運んだり、人生初のイベントに参加したり、初体験がずいぶんあった。
 新たな扉を開いて、未知の世界に足を踏み入れた。
 通学組ではない通信教育組だからこそ、レポートや答案作成のためのネタを求めて、アンテナを張って、少しでも参考になりそうなものはないかと、感度を研ぎ澄ますことができているのかもしれない。
 分かりやすいところでは、図書館はじめ公共施設に貼ってあるポスターやチラシを意識的にチェックするようになった。

 つくづく思ったが、日常の中に学びの場ってたくさんある。
 とりわけ、都心に住んでいる人間は、官民問わず無料あるいは低価格で利用できる文化施設が非常に多いし、週末ごとに様々な文化イベントがどこかで打たれているので、その気さえあれば、スケジュールがすぐに埋まってしまう。
 どこに行くにもアクセスが良い。
 Wifiの利用できるカフェや図書館もいっぱいある。
 文化的にたいへん恵まれている。
 地方在住の学生諸君にはなんだか申し訳ない。

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日比谷公園内の埴輪

 講演内容は(ソルティには)ちょっと高度であった。
 腹の満ち足りた昼下がり、眠り込まないよう、手にしていたシャーペンを太ももに何度も突き刺した(ウチョ)。
 気を抜くと、スクリーンに映されている『古今和歌集』写本の墨で書かれた仮名文字が、うねうねとミミズのように動き出す。
 視線を落として、手元のチラシの講師プロフィールに目をやって、びっくらこいた。
 小川剛生氏は、『武士はなぜ歌を詠むか 鎌倉将軍から戦国大名まで』という本を書いている。
 それこそ、現在ソルティが悪戦苦闘している歴史文学論の設題8番「武士にとって歌とはどのようなものであったか」のテーマ、そのものずばりではないか!(あとで気づいたが、テキスト『和歌と暮らした日本人』の巻末の参考文献に上がっていた)
 講演終了後、さっそく日比谷図書館に寄って、本を借りた。
 やはり、和歌の力はあなどれない。

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角川学芸出版、2008年発行