本書の著者二人は親子です。私たちは、仏教学者の父と数学者の息子という、一見交わりにくい分野を専門とする親子の対話を通じてこの本を執筆しました。その一番の目的は、AIによって人類の持つ既存の価値が奪い尽くされたとしても、なお私たちには「生きる意味」や「存在する価値」が残されるという確信を表明し、「我執を捨てて生きる」という新しい道をAI時代の新たな生き方として提案することです。(「はじめに」より)
佐々木閑の仏教とAIに関する講演は、前に聴いた。
AIの驚異的な進化が、世界を根底から変え、人間の生活ばかりか意識をも変えていくことになるだろうとの予測を口にされた。
本書はその道筋をより丁寧に、より具体的に、より科学的に、さらったものと言える。
全体が2部からなり、第1部が佐々木親子による対談、第2部が息子の斎生(ときおう)によるAI技術とその背後にある数理の解説となっている。
前者は縦書きの右開き、後者は横書きの左開き。例えるなら、国語の教科書と数学の教科書の合体形態である。
前者は縦書きの右開き、後者は横書きの左開き。例えるなら、国語の教科書と数学の教科書の合体形態である。
さらに言えば、仏教用語が登場する第1部が文系的、数式が並ぶ第2部が理系的。
むろん、95%文系人間であるソルティが読めたのは第1部のみで、第2部は最初からお手上げだった。
佐々木斎生は1987年生まれ。専門は代数幾何学。東京大学理学部数学科の出身である。
ソルティは、数理的なことは全然理解できないが、AIが進化していった先に私たちを見舞うであろう究極の問いは想像できる。
それは、「人間はAIに仕事を奪われてしまうのか?」――ではない。
学問や芸術や医療やボードゲーム(囲碁や将棋など)やスポーツの領域において、AIが人間を凌駕してしまうことから生じる問い、すなわち、「地上最高の知的生命体の座をAIに譲らなければならないのか?」――でもない。
あらゆる分野で人間がAIに打ち負かされ、AIに取って代わられることは、人間の尊厳を傷つけ、人間から生きがいを奪っていく可能性がある。
だが、それは「AIと人間」を別個のものとして比較する視点に基づいた、勝敗レースに過ぎない。
ウサギと亀とどっちが早いか――みたいなものである。
より重要な問いは、次のものだ。
「はたして、人間はAIとどこが違うのだろう?」
いや、人間には心がある。喜びや悲しみや怒りや恥を感じることができる。
人間は美を感じ、自然や人を愛し、過去を振り返って後悔したり、未来に希望を持ったり、適切に判断して自己決定し、他人の気持ちを想像して適切に振る舞うことができる。
AIが、一見そのように振る舞うことができているように見えたとしても、実際にはそれは入力されたデータに文字通り“機械的に”反応しているだけであって、思考しているわけでも、感情が働いているわけでもない。
あくまでロボットに過ぎない。
そうした反論が一般であろう。
そうした反論が一般であろう。
しかるに、AIが生活の隅々まで入り込み、その反応の“人間らしさ”が、人間とまったく区別できないあるレベルを超えたとき、人間はこういう問いを自らに向けざるをえなくなるだろう。
「ひょっとしたら、人間自身がかつてAIだったんじゃなかろうか?」
「どこかの惑星の宇宙人が開発した最先端AIロボット、それがヒトの正体なのではなかろうか?」
つまり、人の「心」が数理的・生理的なものに徹底的に還元され尽くして、「私」とか「個性」とか「自己」とかいう概念が幻想であったと、認めざるをえなくなる瞬間の到来である。
斎 AIとの比較で言えば、「AIには心がない」と思いたくなるけれども、むしろ逆で、「私たちには“人間だけが持つ心”というものがあるんだ」という感覚こそが錯覚だと。閑 「AIには心がないじゃないか」というその言葉の投げかけ自体が、実は我欲の一端なのです。「心を持つ自分たちの方が心のないAIよりも優れている」という、自分だけが特別でありたいという、我欲の表れです。
AIと仏教が出会うのは、この地点である。
人間たちに、いやでも「無我」を知らしめるAIの暴力的な力に対して、あらかじめ免疫をつけておくために、仏教の「諸行無常・諸法無我・一切皆苦」という教えが役に立つ、という論点。
なぜなら、到来するAI社会において、もっとも苦しみに苛まされるのは「自我」の強い人間なのである。
閑 これから私たちが迎える社会とは、ある意味で「すべてが無意味な社会」に他なりません。私たちはその現実を直視し、受け入れる必要があるかもしれない。・・・(中略)・・・「社会にどれほどの影響を与えられるか」といった価値観にしがみつき、他人と比べることで自分の立場を確立しようとしても、虚しさが募るばかりです。なぜなら、社会に最も大きな影響を与えるのは、今後は人ではなくAIだからです。だとすれば、私たちは自分自身の内側に目を向け、一人ひとりが自分自身の生き方や生きがいを築いていく必要があります。
佐々木親子の予言、はたして当たるのか?
AIに聞いてみよう。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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