2021年原著刊行
2025年創元推理文庫
深町眞理子、宇野利泰ほか訳
編者のマーティン・エドワーズは現代英国のミステリ作家、評論家である。
『赤い館の秘密』のA.C.ミルン、『緑は危険』のクリスチアナ・ブランド、『トレント最後の事件』のE.C.ベントリー、『野獣死すべし』のニコラス・ブレイグなど、1930年代黄金時代から70年代に活躍した有名作家16人の作品が選ばれている。
こうしたアンソロジーにはありがちだが、ミステリとしての完成度や小説としての面白さには、むらがある。
編者の好みや価値観が反映されるからであろう。
ソルティが面白く読んだのは、ロイ・ヴィッカーズの『ある男とその姑』、ジョン・クリーシーの『名誉の書』、マイケル・イネスの『灰色の幽霊』、クリスチアナ・ブランドの『拝啓、編集者様』の4編。
いずれも小説としての面白さが勝っている。
『名誉の書』などは、正確に言えばミステリのうちに入らないと思うが、人間がよく書けていて胸に残る。
ビブリオミステリの傑作、G.K.チェスタトンの『古書の呪い』が入ってないのか不思議である。
ところで、本書にまつわるミステリを一席。
ソルティは先日、用があって東京駅に出かけた。
帰りの府中行きの武蔵野線の中で本書を開いた。(昨今、列車内で文庫を読んでいるのは奇特な人である)
武蔵野線は路線が長い。
途中で一編読み終えた。
次の一編に手をつけたら中途半端で下車することになると思って、ページに栞をはさんで、デイバッグにしまい込んだ。
家に帰って、寝る前に一編読もうとデイバッグを開いたら、本が入っていない。
帰宅した時、無意識にバッグから取り出して、どこかそのへんに置いたのかと思い、家の中を探したが見あたらない。
はて?
考えられるのは、帰宅途中に寄ったスーパー。
買った商品をサッカー台でバッグに仕舞いこむとき、中に入っていた物をいったんバッグから取り出して、荷物を整理し直した。
そのとき、本だけを入れ忘れたのかもしれない。
翌朝スーパーに電話をかけて、探してもらった。
見つからなかった。
ひょっとして、武蔵野線の中?
バッグに入れたつもりで、隣の座席か通路に落とした?(網棚ってことはないはず)
気づかずに下車してしまった?
全16編のうち12編を読み終えていたので、普通ならそのまま諦めたであろう。
探す手続きが面倒くさい。
だが、そうもいかなかった。
なぜなら、最寄りの図書館で借りた本だった。
本書は新刊なので、手に入りやすい。
書店かブックオフで新しい一冊を購入し、図書館に事情を説明し、弁償するという手もある。
だが、それもしづらい事情があった。
すでに一度、同じ図書館で同じことをやっている、すなわち前科があったからである。
2度目はブラックリストに載ってしまうかもしれない。
ソルティは、その図書館を通じて、県内の他の図書館からもいろいろな本を融通してもらっている。
今後、貸出制限がかかってしまうかもしれない。
昔、JR中央線でガラ携や財布を落とした時、忘れ物取扱所のある高尾駅まで出向いて、探したことがある。(見つかった!)
武蔵野線の場合、どこ駅だろう?
JR公式ページを開いたら、驚いた。
なんといまはチャットで探せるじゃないか!
24時間受付の findchat に登録し必要事項を入力すると、「AIを中心とした最先端の技術を駆使し、落とし物にかかわる様々な関係者の問題を解決」してくれるという。
運良く見つかった場合、個人のチャット画面にメッセージが入るシステム。
すごいな、AI探偵。
登録した翌々日にチャットにメッセージが入った。
JR南浦和駅にそれらしき物品が保管されているという。
JR南浦和駅にそれらしき物品が保管されているという。
翌日、仕事帰りに南浦和まで行った。
無事、本書は帰還し、期限内に図書館に返却することができた。
しかし、どうして列車内に置き忘れたのか、そのへんがいまだにミステリである。
どこのどなたか存じませんが、届けてくれた人に感謝。
おすすめ度 :★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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