2004年ルクセンブルク・オランダ・スペイン・イギリス・アメリカ・イタリア制作。
原題は『TEMPESTA(嵐)』。
ルネッサンスの巨匠ジョルジョーネの代表作にして、ヴェネツィア(ベニス)はアカデミア美術館所蔵の西洋絵画史上最も議論かまびすしい作品。
この作品の盗難をめぐって、水の都ベニスを舞台に繰り広げられる連続殺人と贋作事件と運命的な恋とをミステリー仕立てで描いた映画である。
まず、画面の美しさを讃えなければなるまい。
それもそのはず。ベニス&世界的名画、である。美しくなければウソである。美しくなければ撮る意味がない。
しかも、美しいだけでなく、ベニスという古都が持つ類いまれなる魅力―張り巡らされた水路、迷路のように入り組んだ街路、靴音の響く石畳、噴水のある広場、そこかしこに息づく暗がり、いくつもの瀟洒な橋、ゴンドラ、海に浮かぶ蜃気楼のごとき鐘楼、そして、マントと仮面の彩りとが旅人を中世にタイムスリップさせるカーニバル。こうした道具立てを上手に使って、ミステリーと恋という二つの物語をからませながら盛り上げていく。たいした手腕と感心する。
そう、真の主役はベニスと言えるかもしれない。
となると、やはり持ち出したくなるのは、ヴィスコンティ『ベニスに死す』である。
世界的に有名な作曲家が旅先のベニスで出会った美少年タジオの虜となり、街を襲うコレラもものともせず少年の追っかけを敢行。ついには罹患し、浜辺で少年を眺めながら息絶えていく。テーマは、自然の「美」の前に屈する芸術、「愛」の前に投げ出す人生。
『ヴェネツィア・コード』もまた、腕のいい絵画鑑定士(元画家)が出張先のベニスで出会った美女の虜となり、殺人犯の濡れ衣を着せられながらも危ない橋を渡り続け、女のためにまっとうな人生から転落し、最後には命を落としてしまう。彼が選んだのも芸術より人生より「愛」であった。『ベニスに死す』の高踏的な文学性(原作がトーマス・マンだから当然だが)とくらべると、センセーショナルで俗っぽくはあるが、狙うところは一緒であろう。
人生の成功者となるよりも破滅的な愛を、平凡な日常の気の遠くなるような繰り返しよりもつかの間の甘美なる陶酔を。そんな選択を人にさせてしまう、そんな心の奥の願望を表に引っ張り出してしまう力が、ベニスという街にはある。
それこそがベニス最大の謎であろう。
ミステリーとしては底が割れていて、最後に明かされる真犯人に驚きもしなければ、盗まれた絵画をめぐる謎に『ダヴィンチ・コード』のような奇想天外な解釈が用意されているわけではない。
そこはいいのだが・・・・。
人生が破滅しても悔いはないと主役の鑑定士に思わせるほどの「運命の女」とやらが、ジョルジョーネの『嵐』に描かれている女はもとより、『ベニスに死す』のタジオの魅力にもまったく及んでいないのが、残念至極である。
評価: C+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!