昇仙峡は、読売新聞が創刊135周年(2009年)を記念して企画した「平成百景」で第2位に選ばれている。
 上位20を挙げると、こうなる。

  1 富士山 
  2 昇仙峡 
  3 知床 
  4 十和田湖・奥入瀬(おいらせ)川
  5 合掌(がっしょう)造り 
  6 京都の寺社
昇仙峡120410 015  7 姫路城 
  8 上高地 
  9 函館の夜景
 10 尾瀬 
 11 高千穂峡
 12 宮島 
 13 甲府盆地の夜景
 14 秩父夜祭
 15 縄文杉 
 16 東京タワー
 17 美瑛(びえい)の丘
 18 釧路湿原 
 19 白崎海岸 
 20 伊勢神宮

 半分くらい行っていない(見ていない)。まだまだ旅は続くな。
 自分としては学生の時分に行った北海道大雪山の層雲峡が圧倒的な感動であった。それを超える感動は海外の名所・名跡も含めてまだない。30位にも入っていないが、おそらく1987年にあった崩落事故(死亡3名、重軽傷者6名)のイメージと、以降立ち入りが制限されたことによるのかもしれない。

 昇仙峡へは甲府駅からバスで30分ほどで行ける。アクセスのいいところが人気のポイントであろう。
 天気は上々。この日、甲府の気温は24度に達した。

10:25 甲府駅発(山梨交通バス)
10:54 昇仙峡口着。ウォーキング開始。
     長瀞橋~愛のかけ橋~羅漢寺~石門~仙娥滝
昇仙峡120410 01213:20 ロープウェイふもと駅着
13:30 パノラマ台
13:50 弥三郎岳登頂。昼食
15:00 パノラマ台。下り開始。
     白砂山~白山~刀の抜き石
17:15 天神森バス停。ウォーキング終了
17:50 バスに乗る
18:20 甲府駅着

所要時間 6時間(うち休憩時間 1時間)
 

昇仙峡120410 042 この時期の平日は人が少ない。昇仙峡口でバスを降りたのは自分一人だった。たいていの人はゴールである仙娥滝の上まで行き、そこから下って滝の周辺の渓谷を楽しむようだ。

 昇仙峡は、荒川が花崗岩を侵食したことにより形成された全長5キロの渓谷である。岩壁に生うるは松の木ばかりなので、空の青と川の碧と松の緑、そして岩壁の灰色だけの、単調な色彩の世界が続く。暖色系の映らなくなった壊れたカラーテレビを見ているかのようである。

 観光客用トテ馬車が通る道路から見下ろす川底には、様々な形をした巨岩がゴロゴロしていて、特徴のある形状から名前の付いているものも多い。オットセイ岩、五月雨岩、松茸石、熊石というように。言われてみれば確かにそう見える。(写真は熊石)

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 途中にある愛のかけ橋は、「この橋を二人で渡ると愛が結ばれるという言い伝えがあります」という説明版が立てられている。しかし、橋桁には「竣工は昭和61年」とある。言い伝えねえ~(笑) 橋の下の岩で休んでいたオシドリもやらせ?

 大正14年に時の東宮が行啓されたときの碑があった。昭和天皇である。このあとすぐに即位されたわけだから、青春の日の最後の楽しい一時をここで過ごされたのかもしれない。

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 気持ちのいい、楽しい渓谷散歩のゴールは仙娥滝が待っていた。
 轟音が聞こえる滝の近くの遊歩道の曲がり角を曲がったとたん、「気」が変わった。ヒヤッとする冷気と共に清浄な気の中に体ごと突入した。マイナスイオンかなにか知らぬが、やはり滝の偉力はすごい。一瞬にして別世界、別心地である。
 30メートルの高さを激しく落ちる水の流れは、一瞬たりとも同じものではない。瞬間瞬間、滝は更新を繰り返している。滝壺にかかる虹もまた同じ。一瞬として同じ虹はない。いや、虹そのものが実体としてそこにあるわけではない。細かい水しぶきに屈折、分散、反射する太陽光がその正体である。が、太陽光も一秒たりとも同じものではない。ここには現象だけで成り立っている物質世界(この世)の本質が垣間見られる。

 我々は滝をいつも下(滝壺)から、あるいは中間地点から見ることが多いけれど、ここの滝は上から、つまり滝が始まる地点、川が滝となって落ちていくスタート地点を見ることができる。実際に見てみると、あっけないものである。引力の法則により水が落ちていくだけの話。


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 ロープウェイでパノラマ台に上る。南アルプスの白い輝きがまぶしい。空気に溶け込んではいるが富士山もよく見える。

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 ここから山歩きの開始。
 まず、尾根道を15分ばかり歩いて弥三郎岳(羅漢山)へ。

 山頂(下写真)は手すりも柵もロープもない狭い滑らかな岩の上。怖いったらありゃしない。足をすべらせたら一巻の終わりである。風の強い日は本当に危険であろう。
 しかし、360度の展望は素晴らしい。二等三角点の柱石の周りにはなぜか硬貨が散乱している。羅漢寺山というもう一つの名前のためであろうか。
 ここでおにぎりを食べる。

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 パノラマ台まで戻って下りに入る。
 傾斜のきつくない、道標のしっかりした、歩きやすい道である。まだ芽吹いてさえいない木々の合間から、周囲の奇怪な山塊や遠方にかすむアルプスの山々やはるか下方の家々や道路やダムが見える。これがこの時期の登山の魅力である。
 もちろん、人も少ない。途中で会ったのはドーベルマンを連れた中年夫婦だけであった。

 花崗岩でできた山の頂きは風化が激しく、石が粉々に砕けて、最後には砂になってしまう。白砂山、白山という名前通り、山頂に突如として松林のある白い砂浜が出現する。この砂浜は青い空を海としているのである。
 荷物を降ろし砂浜に座って、しばし瞑想する。

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 途中で拾った天然の杖の助けを借りながら、下ること2時間。最初にバスを降りた昇仙峡入口に着地した。
 色彩の単調な山の世界にいたせいか、ふもとの花が美しい。黄すいせん、コブシ、椿。あでやかな色彩が疲れを癒してくれた。

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 帰りのバスの窓から、山の合間に光の柱が立っているのを見た。
 なにかいいことあるのかな~。

 乗り換えの高尾駅では桜が満開であった。

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高尾の桜120410




 家に帰ると先日面接した老人ホームの採用通知が届いていた。