1967年イギリス映画。
この作品は、一言でいえば、男の「中年クライシス」を描いたものである。
中年期の二人の男、大学の哲学の教授であるスティーヴン(ダーク・ボガード)と、同僚で友人でもあるチャーリー(スタンリー・ベイカー)の揺れ動き、惑い悩む心情を、とても素晴らしくリアルに描いているので、逆に中年でも男性でもない鑑賞者にとっては、つまらない、よくわからない作品かもしれない。
この作品がビンビンに胸に迫るあなた。あなたはまさしく中年男です。
中年クライシスとは、海外ではミッドライフ・クライシス(midlife crisis)と言われる立派な(?)病気である。
一般的には、この危機を経験するのは、30代から50代くらい。仕事においてそれなりの実績を上げ立場を築き、家庭においても平穏な暮らしを送っている。はたから見ればなんの不満もなさそうな状況にある人が、あるときふと、「自分の人生はこれでいいのだろうか」とか、「こんなふうに、敷かれたレールに乗った人生を送ることが幸せだと言えるのだろうか」とか、「自分は妻/夫を本当に愛しているのだろうか」とかいった疑問を抱き始める。
(日経ビジネスオンライン http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100617/215000/)
日本ではバルブがはじけた90年代中頃から、マスコミに登場するようになった言葉であるけれど、そもそもは(例によって)カール・ユングあたりが指摘した概念であるらしく、欧米では60年代頃から社会問題として浮上してきたようである。(もっと起源をたどれば、ダンテだと思う。「人生行路の半ばで、気がつくと私は暗い森に足を踏み入れていた。」(『神曲』冒頭)
67年当時の日本人が観てもチンプンカンプンだったであろうこの映画は、ある意味、まさにいまの日本においてタイムリーと言えよう。
ジョゼフ・ロージーは、「常に待たれている作家」なのだ。
大学教授として功成り名を遂げて、立派な家を持ち、美しい奥さんと可愛いこども達に恵まれて、端から見たらなんの不満も不足もなさそうな哲学の教授が、若く美しい女子学生の出現をきっかけに、ふと自らの人生の虚妄を覗き込み、突飛な行動を起こす。それが、「生きるとはなんぞや」なんてことを古今東西の賢者から学び尽くし、日常的に学生達に教えている哲学の教授であるところに、作り手の皮肉を感じる。
ダーク・ボガードの演技は、あいかわらず深みがあり、観る者を最初から最後まで惹きつける。天性の役者だ。
評価: B-
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!